ユーロ圏のだれもがお年玉を手にしたようにピカピカの新硬貨とパリパリの新紙幣を眺めたり、なでてみたり…。 5€、10€、20€、50€、100€、200€、500€と額が多くなるほどサイズも大きくなる7種のユーロ紙幣のデザインは、1997年国際コンクールで選ばれたウィーン国立銀行勤務の装飾デザイナー、ロベール・カリナ氏(46)による。各国を代表する審査員、フランスは大手デザイン会社カレ・ノワール社創立者カロン氏が選考会議に参加。”欧州建築様式”、”欧州共通の歴史的人物”、”抽象・現代美術”の3テーマのうちどれかを選び44人が出品した。カリナ氏は”欧州建築様式”を選び、表にバーチャル・デザインの7様式の窓を、裏面に橋と欧州大陸の地図をパステル調で浮き出たせている。 ドルに次ぐ世界第2の通貨だけに欧州中央銀行は、新紙幣の偽造を防ぐためいくつかの究極の工夫をこらしている。 ●紙の原材料に綿繊維を使い、地色に偽造しにくいパステル・カラーを加味。 ●凹版印刷により、表の左寄り上部に記された欧州中央銀行の各国語の略字にレリーフを与えている。 ●余白に建物と数字の透かし模様(図1)。 ●中央部に黒い金属糸が挿入されており透かすと線が見える(図2)。20€未満の札の裏面を光線に当てると中央部に€と数字が交互に並びいぶし銀の帯状に光る。 ●ホログラム : 20ロ未満の札の表右端にあるアルミ箔の帯に€と数字が交互に玉虫色に(クレジットカードの鳩のように)輝く。50ロ以上の札の建物の右側には、数字と建物が交互に光るホログラム (図3)。 ●50ロ以上の札の裏面右下の数字が、特殊インクにより、見る角度によって紫から緑、茶色へと変化する(図4)。 これらの特徴は、新紙幣を手にしたばかりの消費者や商人には謎ときに近い。が、偽札づくりのプロたちは、もうとっくにこれらの技術をモノにしているはず。99年2月にすでに10€と50€札を偽造しようとしていたマフィアがシチリア島で摘発された。さらに欧州警察は1999~2000年の2 年間になんと210万枚のユーロ偽造紙幣を押収 ! (01/11/22付朝日新聞)。この道のマフィアはだいぶ前から旧紙幣から新紙幣に切り替えているのである。 そして彼らは、マルクやフランなどの偽札のストックを新旧紙幣並行期間に放出するのではと警戒されている。案の定、1月7日、パリ北西郊外市リラダンの印刷屋から6000万フラン相当の偽200F札を押収。と同時に、市民が新紙幣に慣れないのをいいことに、急ごしらえのユーロ偽札を市場に流しかねない。インターネットから紙幣の画像をダウンロードした青年もいるくらいだ。欧州警察は、偽札はユーロ圏よりもむしろ圏外の、例えばマルクが市場を占めていた東欧諸国で偽造される可能性が高いとみている。偽札のチェックが手薄な東欧諸国で偽造紙幣を放出すれば、数日後にはユーロ圏に流れ込むばかりかドルに並ぶ通貨として海外でも濶歩するかもしれないのである。 消費者も新紙幣を手にするたびに透かしたり傾けたりするくせがつきそう。(君) |
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