●Betelnut Beauty 新しい中国を見つめた6本の映画を集めた「Contes de la Chine moderne」。『Beijing Bicycle』と共にシリーズの先陣を切ったのがリン・チェンシェン監督の『Betelnut Beauty』。兵役を終え仕事を探しに台北に出て来た青年フェンと、家を飛び出しホステスまがいの仕事を始めるフェイフェイ。フェイフェイを見初めるフェンの主観ショットや、意味もなく空に叫ぶ二人の姿は、映画的凡庸シチュエーションを越え、若さのたたずまいがやけに美しく、二度と戻らぬ我が青春に優しいほろ苦さを焚き付ける。 E・ヤン『A Brighter Summer Day』、W・カーウァイ『Happy Together』等でその美しさに注目していたフェン役のチャン・チェンが、さらに素敵な青年になっていた。恋愛映画でさえ主演に醜男を据える韓国(陰謀か?)、格好良くてもスター臭が濃すぎる香港に対し、台湾映画の男の子は単純に素敵だと思う。この傾向は追って調査を続けたい。(瑞) |
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●Liberte-Oleron ブルーノ&ドニ・ポダリデス兄弟の新作は、大西洋に浮かぶオレロン島で夏の休暇を過ごす一家が主人公。海辺で一日ぼんやりと過ごすのに飽きた一家の父親が、「かねてからの夢だった」小さなヨットを買い求める。その日から、上の男の子ふたりは父親の奴隷と化し、ボーイスカウトまがいの特訓を受けることになる。目的は、母親と下の男の子ふたりと一緒に航海し、向かいにある島でピクニックを楽しむためだった…。 彼らが住んでいるヴェルサイユを舞台にした『Versailles rive gauche』や『Dieu seul me voit』などの佳作を撮ってきた兄弟が、大海へと乗り出したのはいいけれど…細かい観察で編み上げられた温かみのあるポダリデス調人間模様を期待していたら、今回は大外れ。登場人物の少なさも災いしてか、奥行きがなくヒステリックな「バカンス族風刺」にとどまった。(海) |
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●La Seconde Chance 映画の脚本家、麻薬中毒者、反抗期の娘、看護婦にしつこく迫る入院患者、薬を酒で流しこみながら愚痴の電話をかけまくる老女、殺し屋に狙われる実業家、パトカーにはねられるバイク青年…彼らが死ぬ間際の数分間と、その死が白黒のオムニバスで描かれていく前半は、何とも暗く陰気…とうんざりしていたら突然、画面に現れるNO MORIR(死なない)!の文字。そこでこの作品の原題『MORIR O NO(死ぬか生きるか)』の意味を理解した。後半ではこれら7人がどのように死を逃れ、死の瀬戸際からどうやってこの世に回帰するか、数分数秒の違いで人間の運命がどのように変わっていくかが、たっぷりと皮肉をこめて色鮮やかに描かれていく。 監督ヴェンチュラ・ポンスの演出力というよりは、原作となった舞台劇の作者、カタロニア出身のセルジ・ベルベルに拍手を送りたい。(海) |
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