昨年秋に保守派議員たちの頑迷な反対を押し切って可決されたPACS法*(連帯民事協約)の施行後はや1年。パクスは、社会的に疎外されてきたホモセクシャルや、結婚という制約に縛られたくないという婚外カップルを社会的に認めた制度としてフランスでは革命的ともいえる。 今年9月末までに約2万3千組のカップル = 4万6千人が裁判所書記官の前でパクス協約に署名し公式に所帯を構えた。統計では、パリだけで全体の1割 (約2400組)を占め、そのうちの7割(地方では3割)は同性愛者だそう。彼ら男同士または女同士の間でパクスをまじめに”結婚”とみなす者も多く、最近ホモセクシャルたちに人気のマレ地区にほど近いBHVデパートなどでは、カッコいい同性カップルがスウィートホーム用に結婚祝い同様にパクス祝い品目録の品選びをする微笑ましい姿が目立ち、デパートもホクホク。 が、実際にパクス生活に入ったカップルや司法関係者に言わせると、同法の矛盾と不備な点に突き当たっているケースが多いよう。例えば、協約後にAが自分の物と明記せずに車を買ったとする。協約後に購入した動・不動産は不分割の共有財産になるので、パクス解消時にはその車も分割(?)しなければならなくなり、Aはシマッタと思うわけだが実際には、パクスの財産不分割制は変更可能なので、別れ話が出たときは即刻、裁判所書記官に財産不分割制の解消を申請 (両者の署名入り)すれば、協約前後の固有財産をはっきりさせることができる。 また同法では、片方が亡くなった場合、共有財産を相手が継げるかどうか曖昧な点も問題になっている。パクスには婚姻・親子関係の相続権は認められていないので、協約者は万が一に備えて特別に遺言を用意しておいた方が無難。さもないと共有財産はすべて遺族の手に渡ってしまうことになる。 もうひとつの問題点は、相手が外国人の場合だ。婚姻者なら滞在許可や仏国籍も簡単に取得できるのだが、パクスはこの点を保証していない。パクスの条件として、仏国内でのある期間の滞在証明を要求する県庁もあるのは、偽装結婚同様に偽装のパックスが不法滞在に利用されるのを防ぐためといえよう。 ところでパクスはホモセクシャルだけでなく、遠地配属を望まない独身教師たちの間でも利用者が増えているそう。同協約は所帯持ちと同格に扱われるので自分の希望する町への配属を望む場合、その町でパクスに同意する独身教師を探し協約を交せば、移動願いを提出することもできるわけだ。 パクスはいつでも解消できるし、親たちや自分もかつて体験した財産がらみの離婚騒動も避けられる。同棲と結婚の中間帯で両方を部分的に取り入れた合理的でクールな、21世紀の社会風俗として定着していくのでは…。(君) *No.446 (99/11/1) 参照。 “Pacs, le guide pratique” S. Dibos-Lacroux (Ed.Prat) |
PACSが結婚に代わる現代風俗に 70% PACS制度に賛成 (’98 : 49%) 48% 同性同士の結婚に賛成 50% 同性同士の結婚に反対 29% 同性カップルの養子縁組に賛成 70% 同性カップルの養子縁組に反対 * 9/1-2日Sofres調査(“T腎u”誌10月号) |