Canard laqué
中華街のレストランの店頭に、照り焼きにされたカモ canard laquéが何羽も吊されている。あそこまで色美しく仕上げるのはちょっとむずかしいけれど、味なら少しもひけをとらないカナール・ラケを作ってみよう。
4、5 人分として、 皮付きで売られているカモの胸肉 magret de canard (キロ90フラン前後) をふたつ買ってくる。ひとつ300グラムほどだ。少し歯ごたえのある方がいいという人は、モモ肉を選び、骨をはずしてもらいましょう。
まず半日ほどタレに漬けこむことにしたい。中華食品店には、水で溶くだけでいいという粉末タレの素が売られているけれど、甘すぎたり食紅の色が濃すぎたりするので、お得意のタレを考案するのがいちばんだ。僕は、ハチミツ、醤油、お酒やラム酒、おろしショウガやニンニク、ネギ、サテ (右の欄参照)、コショウ、アニス風味の八角、シナモンなどをブレンドして作る。カモの皮を先の鋭い包丁で突っついてから、このタレに漬け込みます。 時々ひっくり返しましょう。
オーブンの目盛りを4か5 (160~180度) にして点火。焦げないようにカモについているスパイスやタレをよくぬぐい、熱くなったオーブンへ。 水を少々注いだプラック・ア・ロティール (右の欄参照) や天火皿にグリルを置いてから、皮を下にしてカモをのせ、浮かすようにしたい。たびたびタレを塗りながら30 分焼いたら、今度は皮の側を上にしてもう30分ほど焼く。最後は上火に点火して、皮をカリカリッとさせたい。
プラック・ア・ロティールに、水を新たに少量加え、底にこびりついている肉のうま味を溶け込ませる。これを小鍋にとり、残っているタレも漉してから加え、火にかけて軽く煮詰めれば、おいしいソース。カモをできるだけ薄く切ってから、このソースをかけて食卓へ。カモ丼にするのもおすすめ。ブロッコリーのゴマ油炒めなどを添えましょう。 (真)
●サテ
オレンジ色をした粉末状のサテは、ニンニク、エビ粉、唐辛子、ゴマ油などが入っている東南アジア系の複合調味料 。中国・ベトナム食料品店で手に入る (一袋10F前後)。中華街のレストランでは、焼きビーフンや焼きソバの上にサテ風味の牛肉や海の幸がのっかっている料理に人気がある。炒め料理にもどんどん使いたいが、かなりクセのある風味なので、加減しましょう。今度のレシピのように、トリや豚肉を漬けこむときやカレーの味を複雑にしたいときにも加えるといい。
●八角 anis étoile (badiane)
八角は、中国原産の灌木の実を乾燥させたもので、フランスではその形から “星形アニス” という。香りは、アニス (ウイキョウ) そっくりだが、軽い辛みと甘みを持っている。丸ごと (種よりもサヤの方が香り高い)、あるいは小さくくだいたり粉末にして使用。カナール・ラケやチャーシューなど、甘みをきかせたロースト料理の漬け汁に欠かせない。インドでは、カレーの大切な香りのひとつ。パスティスの風味にも一役。最近はフランスでも、野菜の香りづけやケーキに加える人が増えてきた。スーパーなどで小瓶入りで売られている “Cinq épices” にもこの八角が、丁字やシナモンなどといっしょに入っている。
●plaque à rôtir
今回作ったカナール・ラケだけでなく、各種の肉をローストするときに、重宝するのがこのプラック・ア・ロティール。ふつうグリルがついていて、このグリルに肉を浮かせるようにしてのせて焼くと、表面にまんべんなく焼き色がつき、美しく仕上がる。底に少々水を張っておくと、肉からしたたり落ちる焼き汁が焦げたりせず、最後においしいソースに転用できる。トマトやクルジェットの挽き肉詰めなども一度にたくさんできるし、テンプラなどの油切りにも便利です。