Ile flottante
バニラの香りが漂う、冷たくトロリとしたクレーム・アングレーズの上に、泡立てた卵白の「島」が浮く、美しく上品なデザートです。それにとても経済的。
バニラ1本のサヤを、ナイフで縦に切り開いて、中の種をかき出す。これをサヤと一緒に鍋にとり、牛乳500ccを加えて火にかける。弱火でゆっくりと香りを引き出すようにしたい。沸騰したら火から下ろし 、フタをしておいておく。
卵5個は黄身と白身に分けて、それぞれ大きなボールにとる。まず卵黄の方に砂糖80グラムを加えて、泡立て器で少し白っぽくなめらかになるまでよくかき混ぜる。ここへぬるくなった牛乳を少しずつ加えていく。これを再び鍋にとり弱火にかける。底にくっつかないように木のヘラで8の字を描くように混ぜ合わせていくと、最初は細かく白い泡が表面を覆う。この白い泡が消えたら勝負時。クリームがヘラを一面に覆うようになり、指を滑らせると跡がはっきり残るようになったら完成、即座に火から下ろす。沸騰させるとぶつぶつクリームになってしまいます。これを目の細かいこし器でこして、冷めたら冷蔵庫に入れて保存。
次は「島」の準備。まず小鍋に砂糖100グラム、水大サジ2杯を加えて火にかけカラメルを作る。キツネ色になってきたら、直径24センチくらいの深めの型に流し入れる。ここでオーブンの目盛りを5 (180度) にして点火。卵白に塩ひとつまみを加えて泡立てていく。少し固くなってきたら砂糖大サジ2杯を加え、さらに固く泡立てる。これをカラメルを敷いておいた型に入れる。直火で5分ほど湯せんにかけたら、もう7、8分オーブンでやはり湯せん状態で焼く。卵白は焦げやすいので注意が肝心です。冷めたら、しばらく型ごと熱湯につけ、ぐるりと包丁を入れてから、「島」を型抜きします。
クレーム・アングレーズを敷き、切り分けた島を浮かせ、薄切りアーモンドを軽く煎って散らしたら、ブラボー! (実)
●カスタードcustard
アンテナさんはロンドンっ子だから、カスタード (crême anglaise) が大好き。といっても、彼女のお母さん同様に、好みの量の砂糖を加え、ミルクで溶いて温めるだけでできあがりという缶入りのカスタード・パウダーを愛用。恒例のクリスマス・プディングにも、この即席クレーム・アングレーズが添えられる。彼女いわく、英国人のほとんどがこの缶入りを使っているのだそうだ。本当かな?
●バニラvanille
マダガスカル島やレユニオン島名産のバニラは、黒褐色でツヤがあって、しなやかなものを選びたい。スーパーで売られているものは乾燥しすぎのものが多いので、信頼のおける穀物屋graineterieで求めたい。中の種に香りが集中しているので、二つに割って種をかき出してから使う方が効果的。牛乳といっしょに煮るときは、沸騰したら火から下ろし、時間があったら、フタをして1時間くらい置いておくと、香りがさらによくなる。
●アーモンドamande
5月から6月にかけて、柔毛で覆われた薄緑色の生アーモンドamandes fraichesが八百屋の店頭に並ぶ。これはクルミ割りで割ってから、そのちょっと乳臭い独特の風味を楽しむ。乾燥アーモンドの方は、丸ごとentières、薄切りeffilées、粉状piléesの形で売られている。スーパーや穀物屋でも売られているが、お菓子などに大量のアーモンドを使うマグレブの人たちが通っている食料品店の方が安い。100グラム5~10フラン。丸ごとのアーモンドを軽く煎ってから塩を振り、アペリチフのお供にするとうまい。
●台所のフランス語|monter en neige
monter les blancs d’oeufs en neigeとあったら、卵白を泡立て器やミキサーでかき立てて空気を含ませ泡雪状にすること。固く泡立てるときはen neige fermeとなる。塩をひとつまみ加えるのは、粒状になることgrainerを防いでキメ細かく仕上げるためだ。卵黄が混じっていたり、器に油が残っていたりすると、粒状になりやすい。