ちょっとした発見だ。 “Marie,Nonna,la vierge et moi”ほか N° 450 2000-01-15 『マリー、ノナ、聖母と私/Marie, Nonna, la vierge et moi』は、『ピガール』での主演が光った俳優フランシス・ルノーの初監督作品。テレビ (ARTE) 放映後に劇場公開 (1/26) される。フランス東部の鉄鋼業地帯を舞台に、ここからの脱出を夢見て、その資金集めのためにレイブパーティーを開催しようと奔走するチンピラな若者グループの物語…と、一見ありがちな最近のフランス映画 (社会背景+怒れる若者) 的なプロットだが、その奥に、より深い悲劇を背負った三人の女性像が浮かび上がる。ただの状況描写を突き抜けて、心にグサッと入ってくるものがある。未完成でも、この新人監督に確かな映画的資質を感じる。卵が孵化する瞬間のような、見知らぬ新人俳優達の演技の開花にも立ち会える。監督も役者達も将来性大、ちょっとした発見だ。 ローラン・カンテ監督『人材/Ressources Humaines』のテーマは”階級”! 労働者階級に生まれたフランクは、優秀な学歴を積んで、故郷の父が工員として働く工場に、経営研修生として帰って来る。日本では階級差も階級意識もゆるいから、この映画の前半では、フランスにおける”階級”のあり方に唖然とさせられる。労働者階級と経営者階級の断裂、水と油のように両者はハナから絶対に交わらない性質なのだ。ところがフランクは、あっち側に行った奴、工員連中からの風当たりは強い。しかしここで一番複雑な心境に立たされているのは父だ。フランクはナイーヴに相互協調を計ろうとするが、それは無惨に破れる。温厚な父の、事なかれ主義というか、いつも受け身で”上”の言うことに素直に従ってきた態度を激しく批判する息子…映画は最終的に「人間のあり方」という深みに突入して行く。(吉) Share on : Recommandé:おすすめ記事 【第18回キノタヨ現代日本映画祭】映画を介した日仏の文化的対話へ。名優・役所広司の特集上映も。 【シネマ】ショーン・ベイカー『Anora』公開。『プリティ・ウーマン』への30年後の返答。 【Cinéma】根源的な映画の喜び、オディアールの新たな代表作『Emilia Perez』。 【シネマ】70年代日本のウーマンリブを語る『30年のシスターフッド』。上映とトークの会(無料) 話題の政治劇 『クレムリンの魔術師』ベストセラーが舞台に! 【シネマ】円熟の秋のミステリードラマ 『 Quand vient l’automne 』