コシのある讃岐うどんと高知県人集会所として知られる国虎屋、そこのご主人が野本氏。数年前にライカを購入して以来写真に凝り、今年5月には建築専門学院 (Ecole Speciale d’Architecture) で「Reflets / 反映」という個展を開いた。
4区の自宅から店のあるサン・タンヌ通りまで、道すがら目にしていた水たまりに映るパリの風景。「だんだん面白くなって、道順を変えてみたり、遠回りをするために早起きしたり」と朝晩の通勤が楽しみになった。パレ・ロワイヤルの噴水、広場の銅像、看板とネオン。四季を通して2年間で撮った風景は膨大な数になる。朝10時前には店に入り、夜10時の閉店までの長い一日。午後の休み時間を利用して、写真の引き伸ばしもすべて自分の手で行う。
手焼きのモノクロ写真と手打ちうどんの関係は「両方とも自分の手足*で作るということ」
料理専門学校で調理師免許を修得し、パリで1年半の修行。日本のフランス料理店で仕事もしたが、ある日突然、故郷の高知でうどん屋をオープン。そしてパリにも。「電子レンジやインスタント物がいやになったんだね。粉と水だけで物ができるというシンプルさにひかれたのかな」。そう言う野本氏の素朴さが作品にも反映しているようだ。「写真を見てみたい人は、お店で声をかけてください」(尚)
*国虎屋のうどんは機械で練った後、長い時間足で踏む、という方法をとっている。