宮本隆司は、84年、たまたま撮ったビルの取り壊し工事の光景から触発されて、都市の崩壊現場を撮り続けている。劇場であったり、刑務所であったり、競馬場であったりさまざまだが、紛れもなく崩壊する運命としての都市の本質的イメージを捉えている。今回のパリ初個展は崩壊する建築物を「アーキテクチュラル・アポカリプス」と題して、神戸震災後の風景、香港の九龍城砦地区、そしてオウム真理教の解体されたサティアンを展示している。同時期に開催されたペイルーレ画廊ではホームレスのダンボールの家ばかり並べた。
宮本の神戸—オウムの館—ホームレスの一連の写真は、今日の日本の飽和状態を越えた文明の現状報告と取るべきだろう。 柴田の写真も、環境や生態系の問題と考え合わせるとすぐれて今日的主題であり、両者の仕事は、作家本人の好む好まざるとに拘らず、結果として極めて政治的、社会的な意味を表出しているのだ。こうしたヴィジョンに、今後どのようなクリティカルな視点がさらに介入してくるのかを期待とともに待ちたい。 (kolin) 1月4日まで。火曜を除く12~19時。 11 rue Berryer 8e |
ティエポロはなんといっても青い空がいい。忘れな草のように青い青い空と白く輝く雲、そして雲間を飛翔する無数の天使たち。明るく軽やかなティエポロの絵は、過去の栄光が残照のように漂う黄昏のヴェネツィア共和国で一世を風靡した。彼の装飾壁画には18世紀の絶対君主たちの注文が殺到し、おかげで今もヨーロッパ各地を旅行していると、しょっちゅうティエポロの青空にめぐり会う。 (由) ※Musee Jacquemart-Andre でも、修復の終わった彼のフレスコ壁画を鑑賞できる。 |
紙・繊維を駆使し、面・曲線・色の交差が生み出す幾何学的抽象作品。12/26迄 GNG : 3 rue Visconti 6e (日休) Galerie Esteve : 3 r. J.Callot 6e (日月休) ● ARMAN <巨大彫刻> 『イデオロギーの蒸留機』と題しレーニンの胸像と蒸留酒製造機を合体。12月末迄 Artcurial : 61 av Montaigne 8e ● BATEKE <絵画・彫刻展> 中央アフリカの原住民バテケ族の作品。1/4迄 アフリカ・オセアニア美術館 : 293 av Daumesnil 12e (火休) ●フランソワ・マンサール (1598 -1666) 仏バロック建築を確立した17世紀の代表的建築家。生誕400年。ルイ14世下のJules Mansart (1646-1708)とは異なる。1/17迄 Hotel de Rohan : 87 rue Vieille-du- Temple 3e (12h-18h、月祭休) ●Jean PATTOU <マンサールに捧げる> マンサール(生誕400年)作の建築物を描く水彩・デッサン。12/31迄 (15h-19h 月休) Maison Mansart : 5 rue Payenne 3e ● Lydie ARICKX <回顧展> フランドル出身、バスク地方で制作する女流画家。人体と風景の変容から解体へ。大作を含む50点他、彫刻。1/10迄 Couvent des Cordeliers : 15 rue de l’Ecole de M仕ecine 6e (月休) ● ピカソ <1901~1909> NYメトロポリタン美術館の主に”青の時代”の作品10点とデッサン25点。1/25迄。ピカソ美術館 : 5 r.de Thorigny 3e (火休) 人物、街、風景にこだわった英国表現主義派 Bacon、Lucian Freud (フロイドの孫)、Kossof、Mason、Andrews他の作品。1/20迄 Musee Maillol : 61 rue de Grenelle 6e (火休) 18世紀後半から今年まで、84人の手紙を集めた楽しい本です。ピカソ、コクトー、極めつきのドラクロワ。そしてユゴーやテオフィル・ゴーチエのプロ顔負けの絵が入った美しい手紙たち…。 原稿料を払わない版元のビュロズ宛のジョルジュ・サンドの手紙は、列を作る借金取りのイラストつきで「6000F 払うっていったじゃない。明日までに500Fちょうだいよ。500F、500F」マラルメの孔雀に見立てた恋人への連続イラスト手紙もほほえましい。ランボーの、落書き帖のような手紙は「ヴェルレーヌの奴が来た。こともあろうに神を信じろとオレを説得しやがった…」といった調子。 FAX や e-mail の時代、郵便受けには請求書や DM ばかり。たまには手紙を書こうよという気にさせられます。 (稲) *Edition de La Martiniere. 285F |