同じ子育て中のフランス人E君と話していて、うちは赤ん坊と「川の字」で寝てるなんて口をすべらしたら「とんでもない!」と首を振られたことがありました。でも子どもがまん中じゃあないよ、なんて苦しい弁解をして笑ってすませたのだけれども、この本に出ているデータを見て、びっくり。フランスの育児書の売れ筋11冊中、<添い寝を容認、あるいは肯定しているもの:なし>…E君は、あのとき心底「とんでもない」と思ったんだわネ…。ちなみに、日本の育児書は容認・肯定派が16冊中12冊、否定派はなし。これは夫婦の関係を重視する欧米では、考えられない数字のようです。 この本は、E君の日本人パートナーが「いままさにそういう本を読んでいるのよ」と笑いながら話していたもので、日米英仏中の5カ国の育児書を比較しています。添い寝問題は日本と欧米のちがいが際だっているところで、ボーダレスになりつつある両者の「最後の砦」といったところ。でも全体的に見れば、5カ国の最近の育児書のアドバイスに大差はなく、だからといって確固たる新方針が貫かれているわけでもなく、見えてくるのは、多様化する価値観や家族形態に対応しきれず、ゆれにゆれている育児書業界。じゃあ、どうするのがいいのよ、と言っている間にも、手もとの赤ん坊は幼児となり、子どもとなり、「手遅れ」となり…と、現場の現実はそんなところでしょうか…? (子)
NHKブックス 日本放送出版協会 恒吉僚子/S・ブーコック編著 |