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タブーや先入観に捕われず、物語と歴史を愛し、創意と大胆さを受け入れる。そんなオープン・マインドを掲げ、邦画を擁護するKINOTAYOが、まもなく開幕だ。現在フランス唯一の日本映画の祭典も今年でハーフ成人式(10歳)を迎える。コンペ作品は全8本。塚本晋也『野火』、原田眞人『駆込み女と駆出し男』、廣木隆一『さよなら歌舞伎町』など、充実の作品とゲストが目白押し。なかでも注目は米アカデミー外国語映画賞の日本代表作『百円の恋』。引きこもりの三十路女子が百円コンビニの深夜バイトを経て、ボクシングのプロライセンス取得を目指す物語。デフレ時代の頑張らない人間は、いかに頑張れるのか?本映画祭に初参加の武正晴監督に話を伺った。
— ニートから闘う女まで演じきる安藤サクラさんの魅力は?
作品に限りなく自分を捧げてくれるプロフェッショナルな女優さんです。難しい一子という役に、果敢に挑んでくれると思いました。中学生の時にボクシングジムに通っていたそうで、その過去に驚き、喜びました。彼女の人間力も素晴らしく、感謝しています。
—撮影中、心に残ったシーンは?
ラストのボクシングシーンの撮影は、生涯忘れることのできない撮影。安藤さんの頑張りは、言葉や文字では表現できません。また肉を食べるシーンも素晴らしい。撮影時に涙が止まらなくなり、カットをなかなかかけられませんでした。
—本作の一番の挑戦は?
オリジナルシナリオが映画になりにくい日本の映画製作の体制に風穴を開けたかったのです。シナリオは5年前に作りました。5年前から今へと続く日本を描いており、当然あの大地震の影響も大きいです。
—在仏日本人へのメッセージ。
フランスはもちろん、パリは初めて。映画の中でしか見たことがありません。本作を観て応援していただければ、苦労したスタッフ、キャストが報われます。この映画はコメディ。まずは元気に笑ってもらいたい。パリではあらゆる芸術、歴史にできるだけ触れたいです。(聞き手 : 瑞)
Kinotayo映画祭 :パリは11/24~12/10、ゴーモン・オペラ・プルミエと日本文化会館で開催。その後は地方へ巡回。武監督はゴーモン・オペラ・プルミエで12/1(火)と12/3(木)、CDG空港近くのヨーロッパコープ・シネマで12/2(水)、上映後に脚本家の足立紳さんとQ&Aに参加。www.kinotayo.fr