フランスでフリーランスというと、URSSAFに加入する自由業者profession libéraleか、個人事業主auto entrepreneurになるしかなかったが、コーパナームは、組合員が給与所得者の身分でフリーランスとして働ける道を提案する、2004年に設立された組合形態の会社だ。
組合員(社員)は約800人で、構成員全員が給与所得者。その哲学は「自分のペースで、自分の好きな仕事をする」「仕事に高い意義を与える」「会社に従属するのではなく、会社を共有する」という、見方によってはユートピア的ともいえるものだが、創立以来、順調に機能している。会社と市民団体の中間的な形で、仲間と情報交換をしたり、一緒に仕事を組んだりしながら、一人ひとりは独立した仕事をする。お金を会社に入れる人と、そのお金を使う人が同じで、総会では一人が一票の投票権を持つ。生産性と利潤追求を第一に考える現代の企業社会に一石を投じる、オールタナティブな働き方を提案している。
独立を考えているけれど、急に会社を辞めても収入があるか不安という人や、分野の違う複数の仕事をしている人たちが、情報を求めてコーパナームの説明会に参加している。
加盟したら、収入も経費もコーパナームに伝え、収入に応じた給料を受け取る。社会保険は給与所得者のものと同じなので、自由業者より高い年金が受け取れるなど、メリットは多い。すべてまとめて給料として会社から支払われるので、商業とサービス業など、登録が異なる分野の仕事を同時にしている人は、各管轄団体に連絡したり、経理報告を別々にする手間が省ける点もいい。
デメリットは、医師のような規制を受ける職業の従事者は入れないこと、会社なので、請求書にTVA(付加価値税)を加えなければならず、TVAを免除されるアソシエーションと競合する業種は不利になること、社員なので名刺に「代表」などと書けないことなどだ。(羽)