それも「baveuse(よだれを垂らしている)」といわれる、中の方が、流れ出るようなオムレツ。フランスの友人たちは、このとろりとした半生のところをパンですくっては味わい、目を細めている。昨年夏、トロントから友人のマンディさんが来て、パリのカフェで食事をすることになった。ボクがオムレツを頼んだら、マンディさんもオムレツにした。サラダがついた、卵が3個くらい入っていそうな大きなオムレツが出てきた。もちろん「baveuse」。それを見て、マンディーさんは悲鳴を上げてしまった。カナダでは、オムレツを頼むと中まできちんと火が通っているというのだ(まずそう!)。「衛生上、禁止されているのかもしれない」と言う。「フランスでは焼きすぎたオムレツは人気がないんだ」と説明したら、「試してみるわ」とおそるおそる口に運んでいる。でも「ごめんなさい」といいながら半分くらい残してしまった。
その omelette baveuseを作ってみよう。一人当たり卵2個。ボリューム感を出すためには、あまり丁寧にわりほぐさないこと。ここへ溶かしバターを大さじ2杯を加え、控えめに塩、コショウし、混ぜ合せる。フライパンに油とバターを半々にとり、バターが泡立つようになったら卵を流し入れる。弱火にし、木のヘラで、ときどき卵をすくうように動かしながら1分半ちょっとで、ちょうど「baveuse」の状態に。すかさず、フライパンに接していた側が上になるようにしながら、皿にすべり落とせばでき上がり。モン・サンミッシェルのめちゃめちゃ高くておいしくもないオムレツなんか食べられなくなるよ。(真)