料理上手なジョルジェットさん宅を訪れた時のこと。「今晩はアンコウのロシア風よ」と彼女が献立を告げると、その場にいた息子さん二人が目を輝かせた。「食べたことある? 母さんの作るコレおいしいんだよ」と、今にもよだれをたらさんばかり。せっかくなので、作り方を教わることにした。「じつはそんなに難しくないの」と言いつつも、すでに表紙のとれてしまった古いレシピ本とにらめっこのジョルジェットさん。ただし、レシピ本はあくまでも手順と材料を参考にしているだけ。最初は、本にある分量通りにひとつひとつ計っていたが、だいたいでいいのよと目分量になったのはさすがベテランの貫禄だ。この日は濃縮トマトの買い置きがなかったのだが、これでいいわよとトマトピュレをひとパック入れていた。そう、美味しければいいんです。
まずはアンコウを3センチくらいの厚みに切り分ける。火を入れるとかなり縮まるので大きめにごろごろっと切るくらいで丁度いい。
次はソースの準備。まずはエシャロットをみじん切り。分量の牛乳を鍋に取り、ローリエ、タイム、エシャロットを入れて15分ほど火にかけ、香りをつける。
もうひとつの鍋にバターと小麦粉を入れ、ベシャメルソースを作る要領で炒める。さきほどの香りつきの牛乳で、ダマにならないように少しずつのばしていき、濃縮トマトを加え、塩コショウで味を調える。
フライパンにバターを少量とり、アンコウの切り身をソテーする。軽く火が通ったら、ソースの入った鍋へアンコウを入れ、弱火で15分ほど煮る。最後に生クリームを入れて、塩コショウで味を調えて出来上がり。
できたてのアツアツを味わいたい。付け合わせはやはりご飯で。ゆでジャガやパスタでもいい。アンコウは高級魚なので、saumonette(ツノザメ)や他の白身魚で代用しても美味しく味わえる。お供にはミネルヴォアかボルドーあたりの辛口の軽いロゼがぴったり。(里)
アンコウ800g、牛乳1/2リットル、ローリエ1枚、
タイム1枝、エシャロット1つ、バター40g
濃縮トマト70g、生クリーム大さじ4、塩、コショウ
●lotte
日本では鍋や唐揚げで食べられるアンコウ。旬はやはり冬だが、パリでは1年中手に入る魚だ。たいてい、頭と内蔵を取り除いた形で販売されている。
高タンパク低カロリーでダイエットをしている人も安心して食べられる。DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸を含み、コレステロール値を下げたり、血栓を予防する効果もあるので、大いに生活に取り入れたい食材のひとつ。
難はキロ20?前後と少々お高いこと。身が淡いピンク色だったり、身に透明感があるものは新鮮な証拠だ。よく見て新鮮な物を手に入れたい。
●foie de lotte
以前はフランスでは全く無視されていたアン肝だが、最近はブルターニュを中心に「海のフォアグラ」と注目され、スーパーなどでも売られるようになってきている。つやがあって、うすピンク色の白っぽい生のアン肝を見つけたら即買い! 蒸してポン酢が最高だ。ブルターニュ地方物産店などでは、すでに加熱してある瓶詰のものが販売されている。
アン肝はビタミンAを大量に含み、ビタミンB12やビタミンD、DHA やEPAも豊富。皮膚が弱い人、骨粗しょう症や血圧が気になる人はアン肝を食べて元気になろう。
●hachinette à herbes
パセリやニンニク、エシャロットなどをみじん切りにする時、大活躍するのがコレ。昔ながらの道具です。15?前後で販売されているが、硬質のオリーブ材などで作られていたりするとぐっと高価に。幅15センチほどの木製のボウルがセットになっていて、刃の幅に合わせてうまくカーブしているから、細かく切れていない部分が真ん中に集まってきて、まんべんなくみじん切りができる仕組みです。単純作業なので、子供たちに料理を手伝わせることもできるのでなかなか便利。