
Yasmine Hamdan “I remember I forget”
1975年から10年以上続いたレバノン内戦のときに、レバノン人の心をいやしてくれた歌手といえばファイルーズ*。その哀愁を帯びた独特なボーカルがアラブ圏に響いていた。そして今、ベイルート港爆発事故、極度の経済的危機、パレスチナ・ガザ地区のイスラエルによるジェノサイドという悲劇的な状況の中で響いている音楽は、1976年にベイルートで生まれ、現在パリに住んでいるヤスミン・ハマダンの歌だろう。
今年の9月にリリースされた、7年ぶりという彼女のアルバムを聴いてみた。最初の曲『Hon』**はスローテンポで、「小さな国に 大きな傷 残る人もいれば 消えていく人もいる」と、ハマダンの語りかけるようでいながら力がこもった歌声にひきつけられる。どこかエレクトロポップっぽい音楽にウードの和音がかぶる。『The beautiful losers』が美しい。タイトル曲はほとんどインストルメンタルだが、中東と西欧が交錯するようなアレンジがみごとで、思わず踊り出したくなる。
パリでのコンサート***は3月18日(Trianon 37〜43€)とまだまだ先だが、パリにはレバノン人が多く住んでいるので、早めに予約したい。(真)
