欧州でXの利用をやめる動きが広がるなか、フランスではトランプ米大統領就任式の1月20日にXの利用を停止してほかのSNSに移行する運動「HelloQuitteX(ハロー、Xを去る)」が注目を集めた。
これは国立科学研究所(CNRS)の数学者ダヴィッド・シャヴァラリアスさんたちが開発したウェブ上のアプリを使い、X上のアカウントのデータをフォロワーごとマストドンやブルースカイといった他のSNSプラットフォームに移行しようという運動。20日までにメディア、労組、環境保護団体、大学など1万7000のユーザーがこのアプリに登録した(実際に他SNSへの移行を実行したユーザー数は不明)。
ダヴィッドさんらはXが2022年にイーロン・マスク氏に買収されて以来、「個人や民主主義にとって非常に危険なものになった」と考えている。たとえば昨年夏に英国で少女3人が移民系英国籍の若い男性に殺された事件では、男性が不法移民でムスリムだとの偽情報がXなどで拡散し、極右グループによる反移民、反ムスリムの暴動が広がった。また、マスク氏はX上でスターマー英首相を攻撃したり、服役中の極右政治家の釈放を求めたりもした。
英ガーディアン紙は昨年11月、Xを「有害なメディアプラットフォーム」だとして同紙公式編集アカウントによる投稿をやめると表明。トランプ氏の大統領就任が決まり、マスク氏が米政府効率化省のトップに就任することが決まると、ドイツやオーストリアの60以上の政府機関や研究機関などがX離れを表明。
フランスではフォロワー150万人を持つイダルゴ=パリ市長がX利用を11月に停止したほか、パリ市も1月16日に停止を表明(写真下)。また、環境保護政党のマリーヌ・トンドリエ全国書記が左派連合に所属する議員らにXを使わないよう呼びかけた(冒頭の写真)。グレゴリー・ドゥセ=リヨン市長やサンドリーヌ・ルソー氏ら国民議会議員10人ほどはX離脱を決めたが、左派全体の動きにはつながらず、トンドリエ氏本人は環境保護の主張を広めるためにXに残ることを明らかにした。偽情報とヘイトスピーチが増えたといわれるXだが、極右や反動的な人の主張一辺倒になるのは問題であるため、あえて残ることを選択する人もいる。
一方、EU委員会は17日、Xが欧州の世論を操作したり偽情報を流している、英独などの極右政党を支持しているといった加盟国の批判を受けて、Xの推薦アルゴリズムがEUのデジタル規則を遵守しているかどうかを調査すると明らかにした。また推薦システムに関する内部文書およびその変更の詳細を提出するようXに求めた。米大統領の後ろ盾を得てますます増長するマスク氏とXに欧州諸国は警戒感を強めている。(し)