Andres Serrano – Portraits de l’Amérique
トランプ襲撃事件で、米大統領選の様相が変わりつつある今こそ、見ておきたい展覧会である。アンドレス・セラーノ (1950-)はニューヨーク生まれのヒスパニック系米国人で、本人曰く、ほとんど独学。発表した写真はスキャンダルを巻き起こしてきた。
最大級が、キリストの磔刑像を自らの尿と血液の中に入れて撮った、1987年の「没入 (ピス・クライスト)Immersions (Piss Christ)」だ。赤い色が美しく、幻想的な作品だが、冒涜(ぼうとく)であるとして保守派の上院議員が国会でこの写真を引き裂き、セラーノは福音派からも攻撃された。しかし彼はカトリックだ。磔(はりつけ)になったキリストは血を流し、死んでいく途中で尿も流しただろう。そう考えると、血と尿にまみれたキリストに驚くことはない。人種差別、貧困、消費社会、宗教などのテーマを扱っているが、自分の考えを主張せず、解釈を見る人に任せている。
さまざまな見方ができる彼の作品には、質の高い芸術作品が持つ幅の広さがある。解釈自由のもう一つの例は、「ゲーム:全てトランプのものThe Game : All Things Trump」(2018-2019)だ。トランプが自分をブランド化したことに興味を持ち、トランプ関連品500点を集めて構成したセラーノのインスタレーションである。その中で彼自身の作品は、「アメリカ」シリーズの一環として2004年に撮ったトランプの肖像しかない。ここまでグッズ化するのかと、トランプのエゴの大きさが極め付きで面白かった。2019年にニューヨークで開催された同名の展覧会には、トランプ好きもトランプ嫌いも来たという。(羽)10月13日まで
Musée Mailloli
Adresse : 59-61 rue de Grenelle, 75007 Paris , FranceTEL : 01 42 22 59 58
アクセス : Rue de Bac
URL : https://museemaillol.com/
無休、10h30-18h30、水-22h。入場料:17.5€ / 14.5€ /6歳〜18歳12.5€ / 水曜14.5€。