2024年の印象派。
「ル・サロン(官展)」への出品を拒まれた若い画家たちが、自分たちで展覧会を開いた。そこに展示されたクロード・モネの作品「印象、日の出」を見た批評家が「印象を描いただけ」と、けなしたことが、印象派の誕生となった。1874年4月のことだった。
印象派誕生から150年にあたる今年は、〈ノルマンディー印象派フェスティバル Normandie Impressionniste〉も盛大だ。150もの展覧会やイベントが、3月末から9月までの6ヵ月間、パリとノルマンディー地方で開催される。本紙では、 注目の、オルセー美術館 「1874年、印象派の創造」展、ルーアン美術館のホックニー展、ドーヴィルのザオ・ウーキー展のほか、フェスティバル開幕とともにスタートした、おすすめ展覧会を紹介したい。
フェスティバル名は「印象派」だが、実は現代アート展が多い。それはディレクターのフィリップ・プラテル氏が「印象派は当時のアカデミックな美術界に反旗を翻した前衛芸術家たち。彼らが今生きていたら、どんな表現をしたのか」を考えながらキュレーションを行ってきたからだ。
会場も美術館のほか港や工場跡、教会、スケートリンクなど多様で、表現方法も絵画はもちろん、ビデオ、AI、VRを駆使した作品まで。〈印象派〉は2024年も革新のスピリッツとひらめきに満ちている。(六)
取材・写真・文:
羽生のり子、オヴニー 編集部
Festival Normandie Impressionniste 3/22-9/22
2010年から2-3年おきに開催される、ノルマンディー地方をあげての印象派フェスティバル。展覧会ほかイベントは期日も異なるので、6ヵ月間、サイトでプログラムをチェックしながら旅とアート鑑賞を計画しよう。印象派だけでなく、新進アーティストたちの作品との出会いもあるはずだ。
normandie-impressionniste.fr
Rouen
ディヴィッド・ホックニー「ノルマンディー主義」
David Hockney – Normandism
Musée des Beaux-Arts de Rouen
2019年、ノルマンディーに居を構えたディヴィッド・ホックニー(1937-)の個展は、印象派150周年イベントの中でも呼び物の一つだ。左手に絵筆を持った自画像が入場者を迎えてくれる最初の展示室には、庭師や訪問者、伴侶の肖像画が並ぶ。画面は同サイズ、肌には同じ色を使い、描き方もほぼ同じだが、表情にそれぞれの人の個性が感じられる。
ホックニーは発売直後からiPadを使って描いて、自画像や風景画が描かれていく過程がiPadのタイムラプス機能で見られるのも興味深い。iPadの絵は、ホックニー専用に作った機械で印刷するという。次の展示室にはノルマンディーの風景画。
水に映った植物の美しさを捉えた作品も多く、水はノルマンディーを描く画家にとって重要な要素だと改めて感じさせられる。野外でiPadを使い、アトリエに戻ってアクリルで描いた絵もある。3番目の展示室はノルマンディーの夜の風景を集めた「Moon Room」。月は一夜の間に空を移動する。満月の1日前の2020年10月30日の月夜を、時間の経過とともに5枚の絵にiPadで描いたシリーズでは、空や月の周囲に刻印したような同じタッチが何度も出てくる。iPadで新たな描き方を考えついたのだろうか。80歳を過ぎても新しいことに挑戦する画家の姿は刺激的だ。9/22まで
Musée des Beaux-Arts de Rouen
Adresse : Esplanade Marcel Duchamp (障害者入口は26 bis, rue Jean Lecanuet) , Paris , FranceTEL : 02.3571.2840
アクセス : 国鉄パリSaint-Lazare駅からRouen駅まで約1時間半。駅から徒歩10分。駅からはバスF7でBeaux Arts ROUEN下車。
URL : https://mbarouen.fr
火休、水-日10h-18h (5/1休)。入場無料。