Georges Hugo – L’art d’être petit-fils
文豪ヴィクトル・ユゴーには三男二女がいたが、子どもに恵まれたのは次男のシャルルだけだった。彼の息子で、ユゴー唯一の男孫である画家ジョルジュ(1868-1925)が、偉大な祖父の重圧を感じつつ生きた波乱の生涯を見せる展覧会だ。
ジョルジュは祖父に愛され、幸福な幼年時代を送った。祖父の素描の才を受け継いで、少年時代から絵を始めたが、兵役で中断。軍隊では自らの希望で一介の水兵になり、階級の違う同年代の若者と海の上で過ごした。著名人の孫という境遇からは想像できないが、祖父が書いた庶民を実際に知りたかったのかもしれない。
ところが除隊後は、幼なじみのポーリーヌと結婚し、上流社会で指折りのサロンを開いて社交生活を送るという、真逆の生活になった。政治家や文人が出入りし、プルースト、ゾラ、コクトーらが常連だった。絵も再開し、官展(ル・サロン)に出展して生活は順調に見えたが、妻の従姉妹と恋仲になったため破綻した。
妻と別れ、ジョルジュは恋人とイタリアに移住した。この頃までは風景画や親しい人々を描くディレッタントな画家だった。転機は第一次世界大戦に参戦し、戦場の悲惨さを描いた時にやってきた。軍部から禁じられるおそれがあったが、ジョルジュはぜひとも公表したかった。その気概はさすがユゴーの孫だ。
この頃から精力的に描くようになったが、浪費がたたり、借金も増えて、最後はシャンゼリゼ近くの質素な部屋で亡くなった。彼の一番の傑作は、展覧会ポスターにもなった2番目の妻、ドラの後ろ姿の絵だろう。うなじだけで美しい人と匂わせる、なんとも憎い描き方だ。(羽) 3月10日まで
Maison de Victor Hugo
Adresse : 6 place des Vosges, 75004 ParisTEL : 01.4272.1016
URL : https://www.maisonsvictorhugo.paris.fr/paris
火〜日 10h-18h。 9€/7€/18歳未満無料。