Exposition : Le Monde de Folon
フォロン(ジャン=ミシェル・フォロン、1934-2005)の展覧会がアルケスナン王立製塩所跡で開催中だ。生まれ育ったベルギーからパリに移住し、米雑誌「New Yorker」などにイラストが起用されるようになったキャリア初期から、晩年に着手した彫刻作品まで、ほぼ40年間にわる創作活動をたどることができる。フォロン財団が所蔵する250点あまりの水彩画、白黒のインク画、シルクスクリーン、未公開の写真などが揃った大回顧展だ。
シンプルな構図、ミニマルな線、淡い色やグラデーションなどの色使いで、見る人を詩的な宇宙へといざなってくれるフォロン。しかし彼はメルヘンの世界ばかりを描いていたわけではない。
自然と人間の共存、巨大化する町の人間の孤独、マス文化で画一的になる人の思考や脱個性化などはフォロンがよく扱ったテーマだ。死刑制度廃止キャンペーンのポスターや、世界人権宣言の挿絵なども彼の代表作といえるだろう。社会や世界に常に目を向け、ユーモアと鋭い風刺をきかせ、絵画に表現した。
「彫刻と絵画を同時に展示することは稀」とコミッショナーのサレ氏。機会が稀なだけでなく、ここの庭で彫刻たち(「たち」とあえて、人格化)は、のびのびと命を吹き込まれたかのようにしている。たとえば細い木の幹のような「鳥」。草木の中に居心地をみつけて、とても幸せそうだ。
ほかにも、トランクを持って旅に出ようとしている人、本から視線を宙に向けて何かを思い出す人、夢想する人、疑問を抱く人… などの彫刻作品が、ニコラ・ルドゥが理想都市構想をもって設計したという製塩所とその庭とマッチする。前出サレ氏は、フォロン財団に「数あるフォロン展のなかでもすばらしい」と称えられたそうだが、本当に、これ以上すばらしいフォロン彫刻の展示環境があるだろうか…(筆者は1985年鎌倉近代美術館ですばらしい展覧会を観て以来、ファンになったのだが)フォロン本人が見ても満足だったのではないかと思う。
受付には彫刻配置の場所を落とした地図があるから、それを見ながら宝探しをするように庭の彫刻を見つけよう。(展覧会は11月5日まで)。
フォロンは2000年にブリュッセル郊外に自ら「フォロン財団」を設立した。2005年に没したが、近年は二人目の妻が亡くなり、モナコのアトリエにあった作品や所持品などが財団に寄贈されたばかりだという。
1985年に東京と大阪、鎌倉。95年は東京、静岡、京都で展覧会。昨年末から今年1月まで京都の白沙村荘美術館で彫刻展と、日本にもファンが多いようだ。そして来年は東京、7月から大阪万博のベルギー館でも展示され、合計で9ヵ月間は日本でフォロンが鑑賞できることになるという。
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☞ こちらもあわせてお読みください。
特集「未完の理想郷:アルケスナン王立製塩所」
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● フォロンのビデオマッピング
夏の晩は製塩所の壁に、フォロンのポスター作品を使ったビデオマッピングも行われる。
7月13、14、15、27、28、29日。
8月3、4、5、17、18、19、24、25、26日。
● 製塩所内にはフォロン展の他にも、ニコラ・ルドゥの建築博物館、塩の歴史展、ユネスコ無形文化遺産プロジェクション室(Centre des Lumières)などもあるので、日中もたっぷり楽しめる。
オーディトリアムもあり、王立製塩所音楽アカデミー(Saline royale Academy)がマスタークラスを開催するなど、ますます活動が盛んになっている。
★おすすめホテル★
●経営者夫妻のもてなしのあたたかい心を感じる宿
かつて世界各地のホテルで料理人として働いていたご主人と、コロンビア出身の奥さん。ふたりでアルケスナンの郵便馬車の宿駅だったホテルを徹底改装し、美しく生まれ変わらせた宿「ラルク・アン・セル」。
愛の谷(Le Val d’Amour) 、製塩所の庭(Le Jardin de la Saline)、王立製塩所(La Saline royale) ニコラ・ルドゥ(Nicolas Ledoux)の4室。部屋はそれぞれが違った色調、壁紙、インテリアで整えらていて、どれもたまらなく魅力的。ビリヤードのサロン、食堂(食事は24h前までに要予約。35€)も花を飾り、照明などで華やか。朝食は緑の庭でとることもできる。各部屋に湯沸かしとお茶、粉末コーヒーがある。
☞Arc en Sel Maison d’hôtes
36 Grande Rue 25610 Arc-et-Senans
Tél : 06.0111.9008
www.arcenselmaisondhotes.com/fr
arcensel.maisondhotes@gmail.com
★ ★ ★
●ユネスコ世界遺産の製塩所に泊まる
アルケスナン製塩所の建物のなかに設けられたホテル。
夏の間、製塩所では夜のスペクタクルやビデオマッピングも行われるのでフルに楽しめる。
【料金】シングル:93€程度 。ダブル/ツイン:140€程度。 トリプル:160€(写真の部屋はソファーベッド(+30€)もあるので4人でも可能。製塩所見学、展覧会の入場料は宿泊費に含まれる。
ハイシーズン外の値段はこちら
朝食:大人12€、7€(6-11歳)
☞ Hôtel Saline Royale :
Grande Rue 25610 Arc-et-Senans
Tél:03 81 54 45 17 reception@salineroyale.com
www.salineroyale.com/hotel-restauration/hotel/
Saline Royale d'Arc-et-Senans
Adresse : Grande rue季節によって開館時間が違うので要確認, Arc et Senans , FranceTEL : 03.8154.4500
アクセス : Paris Gare de Lyon駅から、国鉄Arc-et-Senansまで最短で3h15分。パリからの直行はなく、Besançon経由、Dole経由、Dijon経由などいろいろ。Arc-et-Senans駅から製塩所までは徒歩2分ほど。
URL : http://www.salineroyale.com