強行採択のあと内閣不信任案が9票差で否決され、年金改革法案は3月20日に成立をみたが、反対運動は収まるどころか、ますます活発になっている。ここで、反対派の左派議員や市民が改革阻止のために狙っているのが国民投票だ。
この国民投票は2015年から可能になった「共同発議国民投票(RIP)」。これを実施するには、
①まず国会議員の5分の1 (185人)以上が国民投票案に署名しなければならない。これは、すでに20日に左派議員ら250人が憲法評議会に国民投票案(定年を62歳にするという法案)を提出したことでクリア。
②次に憲法評議会が、この法案が国民投票に問われる条件を満たしているか否かを1ヵ月以内に審理する。それをクリアすれば、
③選挙人名簿に登録した有権者の10分の1(480万人)以上の署名が9ヵ月以内に集まらなければならない。
④その後、その法案は上下院で6ヵ月以内に審議されるか、大統領が国民投票実施を宣言することができる。つまり、国会が法案を審議すると決めれば、国民投票はできなくなる。
さらに、③の有権者の署名だが、ネットに登録して署名する手続きが煩雑なこともあり(各選挙区の事務所に出向いて署名することも可能)、以上のステップをすべてクリアするには16ヵ月ほどかかる。
これまでRIPは実施されたことがない。2019年のパリ空港民営化反対のためのRIPの試みは有権者の署名が足らなかった。当の憲法評議会が20年6月にRIPは抑止的で複雑すぎると批判しているくらいなのだ。