国際女性デーのきょう、弁護士でフェミニストだったジゼル・アリミさん(1927 – 2020)の偉功を讃えるセレモニーが国の儀式として行われた。アリミさんが亡くなったのは2年前だが、コロナ禍などで延期になっていた。
パリの裁判所で行われたセレモニーでは、アリミさんの息子のひとりジャン=イヴさんとマクロン大統領が演説。大統領は「憲法に中絶の自由を記載する」意向を語った(アリミさんは妊娠中絶の合法化に貢献)。アリミさんのもうひとりの息子セルジュさんは、現在マクロン政権が進める年金改革が女性に不利*なもので「母が生きていたら、他の女性たちとともに改革反対デモに参加していたはず」として参加を拒否。アリミさんがシモーヌ・ド・ボーヴォワールとともに立ち上げた団体「Choisir – la cause des femmes」の現会長も同じ理由からセレモニー不参加を表明した。
アリミさんは、仏保護領下のチュニジアの、ユダヤ人家庭に生まれた。1949年チュニスで弁護士になり、労働組合員やチュニジア独立運動活動家などの弁護をした後、パリでアルジェリアFLN活動家(アルジェリアを独立に導いた民族解放組織)の弁護を行なった。サルトル、ボーヴォワール、サガン、写真家のアンリ・カルティエ=ブレッソンらの弁護士でもあり、アルジェリア戦争における拷問糾弾、レイプを犯罪化、人工妊娠中絶の合法化などに貢献した。
*女性にとって不利な年金改革:
1)現在政府が進めようとしている年金改革は、女性が男性よりも長く働かなくてはいけないことが指摘されている。例えば1966年生まれの女性は、同年生まれの男性より2カ月長く働かないと満期にならない。これが72年生まれの場合、男女の差が4カ月になり、1980年生まれになると男女で5カ月の差が生じる。
2)現行法ならば満額受給には、41年と9ヵ月働かなくてはならない。だが、出産するか養子を迎えると、1人につき8trimestres(1trimestre=3ヵ月間)=24ヵ月分の納入がの出産・教育期間分として免除になる。今の改革法案が通るとこの制度がなくなる。
3)フルタイムで働き、満期納入した人のみが、今回の改革で話題になっている、月1200ユーロの年金を受給できるが、女性は、男性よりも出産後に仕事を中断、または辞める率が高い。またハーフタイムで仕事をするのも女性のほうが多い。