今年のフランス、こんなことばが飛び交いました。
印象に残った11の言葉で、2022年をふり返ってみました。
49.3
首相は、憲法49条第3項の規定により政府の責任で採決せずに国民議会で法案を成立させることができる。なので「49.3」は「強行採択」のこと。ボルヌ首相は10月19日の23年度予算案第一部を皮切りに、予算案と社会保障予算案について12月15日までに10回の強行採択を決行。左派連合 Nupesは「議会主義の深刻な危機」と反発し毎回、内閣不信任動議を提出したが、いずれも否決された。6月の総選挙で与党連合が国民議会で過半数に達せず、政権運営が難しくなっている。予算法案以外では同一会期に1度しか使えない49.3。年金制度などの重要案件を抱えるこの5年間を乗り切れるか?
sobriété énergétique
原子炉56基のうち半数近くが配管腐食や点検のため停止中。そこにウクライナ戦争の影響でエネルギー価格が高騰。マクロン大統領も初めて「fin d’abondance 豊富さの終焉」「sobriété énergétique 省エネ」などと演説で口にした。省エネのために厚着を、とタートルネックで登場すると、閣僚たちも同様の格好でメディアに登場。また、厳寒の際は輪番停電(délestage)もありとした。環境保護派は、戦争がなくても省エネは早くから促すべきだった、と批判。
“écoterroristes” (selon M.Darmanin)
気候変動に危機感を抱く若者を中心に、全仏オープン、ツール・ド・フランスなど国際的なイベントに侵入したり、外国でもゴッホの絵画にスープをぶちまけるなどでメディアの注目を集め、気候変動対策の緊急性を訴える抗議が多かった今年。夏には仏西部の巨大貯水池建設の反対派と警察が衝突しダルマナン内相は環境活動家たちを「環境テロリスト」扱い。今年もまた水害、猛暑で水不足、乾燥した森林や山の大火災の被害が甚大に。活動家は抗議は非合法illégalかもしれないが、正しいlégitimeと主張。
souveraineté alimentaire
「食料主権」は食料を仏国内かEU内で確保し、輸入に頼らないようにするという考え方。本来は、持続可能な方法で生産された健全かつ文化的に適切な食料を得られる権利、企業や市場に牛耳られない生産者や消費者のための食料確保という意味だが、ウクライナ戦争で穀物や食用油が不足し価格高騰が起きたため、「食料安全保障 Sécurité alimentaire」の意味合いで使われるように。中東やアフリカでは食料危機も起きている。農業省の名称も今年、農業・食料主権省に変わった。米中に支配されないよう欧州にデジタル産業を発展させることを目指すデジタル主権 souveraineté numérique、コロナ禍で半導体や薬品不足に陥った経験から製造業を仏・EUに戻す工業主権 souveraineté industrielle、エネルギー主権souveraineté énergétiqueなど、「主権」という言葉は大人気!
以下もあわせてお読みください。
ことばでふりかえる2022年のフランス《1》
ことばでふりかえる2022年のフランス《3》