年始めからの低降雨量と6月からの断続的な熱波により、この夏は多数の森林火災が発生した。特に8月初めは南西部ジロンド県、ブルターニュ、中南部アヴェロン、ロゼール県などで大規模な火災が続き、14日前後に概ね鎮圧された。
この夏は他の欧州の国も熱波と干ばつに襲われ、森林火災が多数発生。欧州森林火災情報システムによると、1月から8月18日までのフランスの森林焼失面積はスペインの28.3万ha、ルーマニア15万ha、ポルトガル8万6631haに次いで6万2154ha。過去15年間の年平均の7倍だ。
特に7月半ば以降は、南仏エロー県、ガール県、コルシカなどに続き、南西部、南東部、ブルターニュ、ロワール地方でも火災が発生。年初から8月22日までの焼失面積では、大規模火災の起きたジロンド県がトップで2万6726ha、次いでピレネー・アトランティック県1万3135ha、ヴァール県2934ha、ロゼール県2701haなどと南半分に集中している。だが、例年は森林火災の少ないブルターニュやロワール地方、東部のジュラ、ヴォージュ県などでも発生し、今年の火事は拡大速度が速く、長く続いたのが特徴だ。
ジロンド県では8000人が避難するなど、各地でキャンプ客も含めて数千人規模の避難者が出て観光業にも痛手を与えた。8月11~12日にはEU市民保護協力機構の一環で、ドイツ、ルーマニア、ポーランドなどから消防隊員361人と数十台の消防車が仏南西部に応援に駆けつけ、4機の空中消火機も派遣。なお、7月にジロンド県で7400haを焼失した火事など、合計26人が放火の疑いで逮捕された(5人に有罪判決)。ダルマナン内相は21日、各地の憲兵隊に放火など環境犯罪専門の人員を設ける(全国で3000人)とした。
また、今年の森林火災は針葉樹が焼失面積の約25%を占め、昨年の9%を大きく上回った。ジロンド、ランド県は植樹された松が多い。農業アカデミーによると、19世紀以降に植林された木の8割は木業のための針葉樹で気候変動に脆弱であり、広葉樹との混交林にすれば火事、嵐、害虫に強く地球温暖化対策に貢献するという。
雨が降って8月後半には大規模火災はほぼ収まったものの、気象学者は今後、干ばつがより早期により長期間来ると予想している。今夏の猛暑、干ばつ、森林火災で気候変動はより身近に感じられるようになった。ボルヌ首相は、気候変動対策を策定するための協議を9月から開始すると発言しているが、政府が気候変動対策に本腰を入れることを期待したい。(し)