全3回連載【世界一の麻の生産地ノルマンディー】
①麻の歴史、栽培と加工。麻フェスティバルへ。
②ドゥドヴィルのエコミュゼと麻祭り。
前回紹介したドゥドヴィルの麻祭りでは、麻の実を使った簡単な料理の実演があったり、麻の実粉・実入りのパンや、麻の実入りソーセージ、麻の実入りのビールがスタンドに並んでいた。それまで麻が食品になることを知らなかったために、とても興味深かった。祭りの関係者に聞くと、麻の実は近年、キノア(キヌア)などの雑穀類とともに人気が高まっているという。
実や油をとるための麻は繊維向けの麻とはやや種類が違い、フランスよりもロシア、カナダなどでの生産が多い。麻の実は、青魚や植物油に多く含まれていて動脈硬化の予防になるというオメガ3脂肪酸が豊富で、大さじ2杯でオメガ3の1日の必要摂取量を確保できる。その上、植物繊維、鉄、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB9も豊富で便秘解消、乳がんリスクやコレステロールを下げる効果も謳われている*。
*ただし、過敏性腸症候群、大腸憩室症、腸閉塞の人は摂取不可。薬を飲んでいる人や3歳未満には勧められない。健康な人も1日大さじ2杯まで。
もちろん、麻の実から作る亜麻仁油も同様の効果がある。麻祭りで味見させてもらったが、黄金色で、オリーブ油のような独特の香りはなく、あっさりした味。ただし酸化しやすいので、ドレッシングや風味付けなど、熱しないで使い、冷暗所に保存、3ヵ月以内に消費しなければならないそうだ。亜麻仁油は食用油(250ml入りで7~9€)として使用できるほか、ナラやブナの木の家具に塗ると湿気やカビ、害虫から守る。皮膚のトラブルを解消する働きもあって、石鹸やスキンケア製品にも使われているというスグレものだ。
麻の実は濃い茶色のものと、黄土色のものの2種類(成分はほぼ同じ)がオーガニック食品店で手軽に入手できる。ゴマと同じで、そのまま食べても脂肪酸は体内に吸収されないので、なるべく調理時にすりつぶすほうがいいとのこと。麻祭りで実演していたパンにのせるスプレッドは、麻の実をそのまま炒ってから、ハーブのみじん切りとともにクリームチーズに混ぜていたが、栄養価はともかく、麻の実のプチプチ感が舌に心地よい1品だった。他にはサラダ、揚げ物のパン粉に混ぜる、季節のフルーツといっしょにヨーグルトに混ぜる、スムージーなどにひとつまみ加える、マフィンやパウンドケーキに入れる、など用途は広い。サラダのドレッシングに少量加えたり、魚の切り身の焼き終わりにつぶしたのを加えたり、自家製ペストに入れたり、さまざまな工夫ができそうだ。
ドゥドヴィルの祭りでは地元醸造所で造る麦芽ビールに麻の実で風味をつけた麻ビールも売っていた。残念ながら味見はできなかったが、ヘーゼルナッツのかすかな香りでフレッシュ感が増すとか…。(し)
レシピコーナー
麻の実を使ったオリジナルレシピをご紹介。
①クリームチーズスプレッド
炒った麻の実、エシャロットとチャイブのみじん切りをクリームチーズに混ぜる。割合はチーズ3、麻の実、エシャロット、チャイブが各1くらい。バゲットの薄切りやクラッカーにのせて、おつまみに。
② 麻の実とゴマのサブレ(15~20個)
【材料】小麦粉160g、砂糖50g、麻の実45g、ゴマ35g、レモンの皮少々、バター(柔らかくして角切りに)70g、卵1個
1.小麦粉、砂糖、ゴマ、麻の実、レモンの皮を混ぜる(栄養価吸収のために麻の実とゴマは約1/3をすりつぶしてみた)
2.バターを加え、指先で混ぜ合わせる。
3.卵を加え、なめらかな生地にする。
4.生地を2つに分け、それぞれを直径4㎝の棒状にする。ラップに包んで1時間以上、冷蔵庫に。(冷凍庫15分でもOK)
5.天火を200℃に。生地を数ミリ厚さに切って、クッキングペーパーを敷いた天板に並べ、15分焼く。網上で冷ます。