6月12日、19日の総選挙(国民議会議員選挙)に向けて選挙戦が始まった。
フランスの総選挙の仕組みを、見直してみました。
1区1人選出の2回投票制。
総選挙は、任期5年の国民議会(下院)577人の全議員を一斉改選する。在外フランス人の外国選挙区11を含む577の選挙区から各1人の議員を選ぶ。選挙区は人口に応じて区分され(2010年の選挙区調整では1区平均12万人)、通常は一つの県に数選挙区がある。有権者(18歳以上で選挙人名簿に登録している人)は自分の選挙区の候補者から一人だけを選んで投票する。
第1回投票で有効投票数の50%以上、かつ有権者の25%以上に相当する得票があれば、その候補者は当選する。それに該当する候補者がいない場合は第2回投票となるが、参加できるのは有権者の12.5%以上に相当する得票数があった候補者のみ。普通は2人か3人、接戦なら4人の候補が残ることもある。決戦投票では得票の首位に立った人が当選する。以上のように、第1回投票では投票率が重要になる。前回2017年の投票率は全国平均で57%だったが、年々下がる傾向にある。今回はどの程度になるだろうか?
この方式では、決戦投票で接戦になった場合に2位以下の候補への票が死票となり、大政党に有利だ。そうした批判から、マクロン大統領は17年の大統領選で議員の20%を比例代表制にするという公約を掲げたが、改革は実行されなかった。国民連合のルペン党首は今回、3分の2の議員の比例代表制への移行を唱えている。ただし、比例制では議席が分散しやすく安定政権が作れないという欠点もある。
「コアビタシオン」の可能性。
服従しないフランス党(LFI)のメランション氏は、「第3回投票(総選挙)で私を首相に」と大統領選挙後にアピールしたが、これは総選挙でLFIを含む左派連合が勝利して国民議会の議席の過半数を占めることを意味する。
首相は大統領が直接任命し、首相の提案をもとに閣僚も大統領が任命する。首相は任命されると、国民議会で施政方針演説を行い、信任投票に付される(不信任の場合は内閣総辞職)。だが、これは憲法上の規定ではなく伝統のようなもので、実際、信任投票にかけなかった首相のケースもある。国民議会で多数派でないと法案が通らないので通常、大統領は議会多数派の党から首相を任命する。でないと、内閣不信任案の可決で内閣総辞職の事態に陥る可能性大だからだ。
つまり、左派連合が国民議会で多数派になれば、マクロン大統領はメランション氏を首相に指名せざるを得ないことになり、コアビタシオン(保革共存)が誕生する。過去にはコアビタシオンが何度かあったが、今回はどうなるか? 選挙結果を見守りたい。(し)