4月23日、ベルギーの北海に面した港町、オーステンド* に生まれ育った歌手アルノが亡くなった。72歳だった。その訃報から数日後、オヴニー紙に、通ならではのシャンソン記事を連載していた(南)さんから「2000年以降の最も好きなシャンソン歌手の一人だった。彼はとりわけステージが素晴らしく(…)」というメールが届いた。ぼくもアルノの実演を聴きに2度ブリュッセルに出かけている。なぜかというと、ベルギーだとアルノがフランドル語で何曲か歌ってくれるし、彼と一体となった聴衆の熱狂度がすごいのだ。『Putain, putain, c’est vachement bien ♩♫』
昨年リリースされた『Vivre』** は、フランス北部出身の名ピアニスト、ソフィアンヌ・パマールとのコラボレーションというすぐれた企画。過去のヒット曲を歌っているのだが、特有のしゃがれれ声は深さを増している。、たとえば『Les yeux de ma mère』は、人間の虚飾をとりはらった心の歌。「かあさんはオレの足がくさいのを、裸がどんなかを知っている。オレが病気になると座薬を入れてくれる名人なんだ。でも、かあさんの眼はいつも光を宿している」。肌のあたたかさ、匂いが伝わってくる。アデュー、モナミ!(真)
Le Label/22€前後。
*故郷の町への賛歌『Oostende bonsoir』のプロモーションヴィデオ。「毎晩のごとくオレはひとりなんだよ。オーステンド、こんばんは」www.youtube.com/watch?v=bH8x447yeNI
**このアルバムのメイキングオフも必見です。www.youtube.com/watch?v=sMGYBnm0k68