3月17日で、Covid-19感染拡大による最初の外出規制から1年が経った。突然の外出規制、マスク・検査不足、企業への支援、給与補償、病床の逼迫、遠隔授業、精神面の影響など様々な問題と試練を経ながら、社会と人々の生活は、今もCovid-19に脅かされ続けている。この状況から脱するためのワクチン接種が欧州では12月から始まったが、期待通りに進んでいないのが現状だ。
通常は数年かかると言われるワクチンは異例の速さで開発され、12月のファイザー-BioNTech、1月にモデルナとアストラゼネカ、3月11日には1回接種ですむジョンソン&ジョンソンがEU医薬品当局に承認された。フランスでは最初は高齢者施設優先にして手間取ったが、その後対象を広げ、接種は順調に進むかに見えた。ところが、ワクチンの供給の遅れ、さらにアストラゼネカで血栓等の副作用が報告され、死者2人を出したノルウェーなどが11日に使用を停止。続いて独・仏・伊など計15ヵ国も中断に踏み切った。18日に欧州医薬品局が安全宣言を出して、仏・独・伊などが翌日使用を再開した。重篤な副作用が55歳未満の人に生じたことを受けて、仏保健当局は同ワクチンの接種を55歳以上に限定。その上、アストラゼネカは第一四半期9千万回分、第2四半期1億8千万回分というEU共同購入契約を大幅に下回る3千万回分、7千万回分しか供給できないことが判明。EU委は24日、域内製造される同ワクチンの英などへの輸出を監視する方針を発表。開業医や薬剤師も接種できるようになったのにワクチンがないのでは接種は進まない。
パリ首都圏など一部地域の第3回目の外出規制措置が始まった20日から2日後、仏政府はパリ郊外のスタッド・ド・フランス(競技場)など全国35ヵ所に大規模接種センターを設置し、4月から接種数を大幅に増やすと発表した。
3月27日時点で国民の10%に当たる約774万人が1回目の接種を受けている(2回目265万人)が、4月初めからファイザー中心に週250万回分入手できるとし、4月半ばまでに1千万人、5月半ばに2千万人、6月末までに3千万人に接種する目標を立てている。だが、1ヵ月で1千万人が2回接種するなら2千万回分が必要となり、供給数が追いつくのか疑問だ。ワクチンの効力持続期間が不明な現在、迅速に最大数の接種が行われないと効果が期待できない。今あるワクチンは南ア変異種にはあまり有効でないという臨床結果も出ており、病床が逼迫するフランスで時間との競争が続いている。(し)