3月12日に開催されたコロナ禍中のセザール賞。華やかな映画の祭典は下ネタの洪水に加え、あらゆる主義主張がアーティストの口から飛び出した。衣装賞の授与のために登場した女優コリンヌ・マシエロは、アンテルミタンへの連帯を示すため全裸となり物議を醸した。賞レースの結果はアルベール・デュポンテルの『Adieu les cons』が作品賞など7賞を獲得。だが話題は、映画作品より過激な授賞式に集中した。
俳優で監督のジェラール・ジュニョは、ラジオで「(セザールが)映画館に戻りたいと思わせるものでなく残念」と発言し話題に。バシュロ文化相は、「セレモニーはフランス映画に有益でなかった」と批判。彼女は授賞式で『私のバラ色の人生』という、このご時世にやや能天気な題の自伝の出版が揶揄されていたが、批判は彼女なりの反撃かもしれない。さらに保守系議員10人はマシエロの行動を露出罪として糾弾。「禁固1年・罰金1万5千ユーロに相当する」と検事正に手紙を送りニュースになった。
ネット新聞メディアパルトはアンテルミタンへの連帯のため、北部リールの劇場にいたマシエロに直撃取材を敢行。「(経済的に市民は)丸裸ということを見せたかった。そのためには本当に裸にならないと意味がない」「中年女性からは『私たちも存在していることを示してくれて有難う』と言われた」「行動しなかったら誰も文化や教育、医療に携わる人々、学生たちの不安定さについて語らない。(上手くいった)証拠にあなたもオーストリアのテレビも来ている」と力強く語った。ベルリン映画祭審査員特別賞受賞作『Effacer l’historique』や、人気ドラマ『Capitaine Marleau』の出演などで知られる彼女は、言動は過激だが、常に心は市民とともにある言行一致の人として信頼に値する俳優だろう。
21日、バシュロ文化相はコロナ感染を発表。昨年もリステール文化相が直後にコロナに感染していたが、政治家にとってセザールは妙に縁起が悪いようだ。まずは文化相と文化産業の健康回復を祈りたい。(瑞)