2月3日、パリ行政裁判所で、国は地球温暖化対策を十分に行っていないという判決が下された。訴えていたのは、グリーンピース・フランス、オックスファム、「自然と人間のためのニコラ・ユロ財団」、「我々皆の問題」の4団体。オックスファムは貧困と不平等をなくすための国際組織で、気候変動で途上国の人々、特に女性と子どもが影響を受けると訴えている。ニコラ・ユロ財団は、元環境大臣でエコロジストのニコラ・ユロが大臣になる前に設立した環境保護の財団だ。「我々皆の問題」は気候変動による不平等や環境破壊がおよぼす損害を法的に解決することを目的として2015年に設立された。
4団体は提訴も視野に入れ、2018年12月17日に政府に気候変動対策を問う書状を送った。そして翌日、署名運動を開始すると1ヵ月で200万筆が集まるというフランス史上最大の署名運動になり、最終的に230万筆が寄せられた。その後、フィリップ首相、ドリュジ環境大臣(いずれも当時)と会合を持ったが、政府の回答を不十分として2019年3月14日、提訴に踏み切った。女優のマリオン・コティヤール、ジュリエット・ビノシュ、エコロジストのシリル・ディオンなど著名人も支援した。
原告の主張は「国はパリ協定を遵守し、温室効果ガスを削減せよ」だった。国は2015年に「2030年までに温室効果ガス40%減」の目標を掲げていたが、順調に目標達成に向かっていない状況だ。判決は「国の温暖化対策は不十分で、原告団体が主張する集団の利益を侵害している」というもの。裁判所は原告が求めていた環境破壊の損害賠償は「修復不可能か修復措置が不十分な場合にしか出せない」として却下。代わりに4団体に1ユーロの象徴的な金額を支払うよう国に言い渡し、国が今後とるべき措置を命ずるか否か検討するため、2ヵ月間の猶予期間を設けた。原告団体は「歴史的な勝利」と大喜びだ。しかし同様の裁判はこれが初めてではなく、世界中で起きている。フランスの「今世紀の大問題」訴訟が参考にしたのはオランダの例だ。オランダ政府は2019年12月、対策の遅れを挽回するために1年間で二酸化炭素排出を25%削減するよう裁判所から宣告された。スペインでも複数の環境団体が2020年末に政府を提訴。グリーンピースのジュリアール事務局長が言うように、今後、オランダやフランスの例がほかの国の参考になっていく可能性がある。(羽)