Louise Jallu “Piazzolla 2021”
タンゴといえばバンドネオン、バンドネオンといえば、アストル・ピアソラ、ピアソラといえば『リベルタンゴ』と言う人が多い。けれどぼくは、やっぱり本場アルゼンチンの、踊る人たちのステップが見えてくるような、切れ味よく歌うバンドネオンに惹かれる。とはいえ、パリでナディア・ブーランジェに師事したりしながら、クラシックやジャズの音楽性をとり入れ、Tango Nuevo(新しいタンゴ)を生み出した功績は大きい。そんなピアソラの曲のとりこになったヴァイオリニスト、ギドン・クレメールの『Hommage à Piazzolla』は、クラシック寄りの名盤だった。
若くしてフランスのバンドネオン界の第一人者になったルイーズ・ジャリュの新盤は、ピアソラの世界の隅々まで入り込んで、2021年という今の都市風景の中に、バンドネオンでつむぎ出してきたタンゴ。現代音楽やジャズを思わせる、ピアノ、ヴァイオリン、ギター、ベースとの緻密(ちみつ)で大胆なアレンジ! たとえば『リベルタンゴ』で、ピアノの激しい不協和音やサイレンのような音をバックにジャリュのエネルギッシュなバンドネオンが立ち上がってくるときの興奮…。おすすめです!(真)
Klarthe/15€前後。