政府は9月3日、新型コロナウイルスで甚大な影響を受けた経済の復興計画を発表した。外出禁止令で多くの企業活動が停止したことによる一時的失業への給与補償や銀行融資への政府保証などで政府は春から4600億€の緊急支援をしてきたが、これに加え、今後2年間で1000億€を新たな経済復興策に充てる意向だ。
復興策はエコロジー転換(300億€)、企業競争力(350億€)、社会連帯(350億€)の3つの柱から成る。エコロジー転換では、CO2削減のために仏国鉄(SNCF)の貨物輸送促進と夜行列車2路線増加(47億€)ならびに自転車・公共交通機関促進など計110億€。水素エネルギー/燃料電池などの開発20億€を含むエネルギー転換のための企業への支援90億€。建物のエネルギー効率向上のための改修に70億€。2つ目の企業競争力向上では、企業の不動産にかかる地方税「企業付加価値税」を半減する(年間70億€)など減税100億€(2年で20億)。企業の自己資本増強のための政府・銀行融資への政府保証30億€。製造業の国内回帰など企業投資への補助金10億€。最後の社会連帯では、以前に決定された若者雇用促進策(26歳未満の雇用に1人4千€の社会保険料免除、職業訓練契約を結ぶ企業への支援金)が今後2年で67億€。失業者増加を抑えるため長期の就労時間削減への給与補償66億€。将来性ある職業への転身のための職業訓練に10億€、貧困者救援に2億€追加などだ。
この復興策に対し、右派からは「遅すぎる」、左派からは「不十分」、環境保護派からは雇用維持と環境保護を企業支援の条件にすべきといった批判の声が噴出したほか、全国市町村協会は企業の地方税減税で33億€の歳入減になると反発。2020年度は経済成長マイナス9%、80万の雇用喪失が予想されている。カステックス首相は経済復興策で2021年に16万の雇用創出を目指すと言うが、雇用維持の効果には疑問が残る。労組からは企業支援については雇用維持の保証を求め経済社会評議会がそれを監視すべきとの声も。一方で、低所得世帯への支援が不十分とする経済学者の指摘もある。
仏政府は復興策で2022年に経済をコロナ以前に戻すことを目標に掲げる。一時的失業、融資の政府保証、TVA税率引き下げなど総額1兆2300億€の経済措置をとったドイツですら四苦八苦するなか、仏政府は目標を達成できるのか、コロナ危機でさらに貧困が進んだといわれる低所得者層を救済できるのか、不安と疑問は尽きない。(し)