オルセー美術館が閉鎖中でジェームズ・ティソ(1836-1902)展を観られないので、アルテ局のドキュメンタリー番組で作品と人物を紹介したい。
ティソは生地商人の父、帽子などを作るデザイナーを母にナントで生まれた。パリの美術学校で学び、その後印象派となったドガやホイッスラーと交流したが、ティソ自身は印象派には与しなかった。ル・サロン(官展)に流行の衣装を着た女性像の絵を出し、評判となる。布地を見て育ったティソは衣装の細部にこだわった。華やかなドレスの女性、シルクハットのダンディな男性たちを見事に描いている。表情のとらえ方も巧みだ。
1871年のパリ・コミューン後、ロンドンに渡り、本名のジャック=ジョゼフをジェームズとイギリス風に変えた。イギリスでは富裕層の肖像を描き、パリ時代以上に社交界の画家となる。恋人キャスリーン・ニュートンの肖像を多く描いたが、彼女は1882年に28歳の若さで死んでしまう。傷心のティソはフランスに戻り、2度とイギリスに渡ることはなかった。(羽)
『James Tissot – L’étoffe d’un peintre』 :
www.arte.tv/fr/videos/090612-000-A/james-tissot-l-etoffe-d-un-peintre/
(6月3日まで視聴可能)。