5月11日、フランスのロックダウン解除と同時に、パリでいち早く再オープンしたのが、去年オープンしたばかりのこちらのミュージアム。館内の見学者の人数を制限するために、1時間ごとの予約制です。
2019年12月末、パリのポンピドゥ・センター近くにオープンしたばかり。連日、交通ストもなんのそのの盛況が続くのが、「Le Musée de l’Illusion イリュージョン・ミュージアム」。フランス語の”ミュゼ”は「美術館」と「博物館」の意味を持つが、そのふたつの定義に足をかけているような場所である。目や脳の錯覚を積極的に利用した、インタラクティブな科学ミュージアムだ。
すでにパリにはグラン・パレ近くの発見の博物館や、ラ・ヴィレットの科学産業博物館など、子ども向けの体験型ミュージアムがいくつかあるが、当館は大人同士でも十分楽しめる。二層のフロアには70以上の展示を用意。壁面には所狭しと錯覚を利用した展示の数々が、絵画のように飾られる。映像が立体的に浮かび上がるホログラムの連作も飾られていた。グリーンを基調とし、幾何学的なモチーフが散りばめられた洗練された空間は、昨年ポンピドゥ・センターで回顧展があったヴィクトル・ヴァザルリ(ルノーのロゴなどで有名)の世界観に近い。
天井にベンチが張り付く「逆さまの部屋」では、来場者たちが楽しそうに「はい、ポーズ!」。撮った写真を逆さにすれば、無重力空間で撮ったような写真の出来上がりだ。他にも遠近法を利用することで、椅子に座る人が小人に見える「ブシェの椅子」(レンヌ第二大学のブシェ准教授が開発)や、草間彌生の作品を彷彿させる鏡がはめ込まれた「無限の部屋」など、全体的にインスタ映えを意識したスペースが目立っている。お皿の上に人間の頭が飛び出す「ボナペティ!」(頭が食べ物のように見える写真が撮れる)も、仲間うちで盛り上がりそう。カラフルな光が放たれたスペースでは、カップルが写真を仲良く撮り合っている。やはり、しっかり大人のデートスポットにもなっているようだ。そして忘れずに体験してほしいのが「ヴォルテックスのトンネル」。周りの背景が動くことで、バランス感覚を失い前に進みにくくなるトンネルだ。地面は動いていないはずなのに、なぜか乗り物酔いのようにたちまち気持ちが悪くなるから摩訶不思議である。
このミュージアムは2015年にクロアチアのザグレブに登場したのが第一号。その後はニューヨーク、トロント、上海、ドバイと世界17カ国で誕生し、この度パリに上陸した。今後もローマ、アムステルダム、マドリッドなど次々と展開する予定。錯視や錯覚という人間の原初的な体のメカニズムを利用しながらも、その実、SNSが隆盛な新時代の嗜好に合わせた今どきスポットとして急成長を遂げている。入場料は18ユーロと少々お高いパリ値段ではあるが、間口が広く誰でも楽しめ、年中無休のこんなスポットを知っておくのは便利だろう。(瑞)
Le Musée de l’Illusion
Adresse : 98 rue Saint-Denis, 75001 Parisアクセス : Étienne Marcel
URL : https://museedelillusion.fr
毎日10h-20h (木金土は 22hまで) 大人18€/学生15€/5歳~15歳12€/5歳未満無料