カズさんは、NPO法人「GANBALO/ガンバロー」の主宰者。1949年東京生まれ。父は戦時中、満州従軍の後、繊維会社を設立。カズさんは青年時代に朝4時起きの弁当配達で渡仏資金を貯め、71年にアンカレッジ経由で来仏した。
パリではどんなことをしてきましたか。
来たばかりの夏は2カ月間、欧州10カ国2万キロをキャンプをしながら車で周りました。各地で違った言語に触れ、英語だけの時代が過ぎたことを悟り、グルノーブル大学で遊学中にフランス語を習得。
生活の基盤を作るためパリに出て、新進服飾デザイナーの営業や新聞特派員事務所や通訳を経てCM映像撮影のコーディネーターになったのが映像の世界に入ったきっかけです。当時はテレビCMの黄金時代で、欧州、アフリカ、東欧まで撮影班を連れて回りました。カネボウ男性用化粧品のCMにマストロヤンニが起用され、日本の劇映画の監督と仕事をする機会にも恵まれました。化粧品、ウィスキーや自動車など数多くのCM撮影をヨーロッパ各地で行い、ネットワークを構築。もちろん日本の当時の著名俳優らのお世話もしました。忙殺され日仏結婚は破綻、娘が一人います。
2011年福島原発人災事故を機にパリでガンバローを立ち上げ、福島の若者の保養プログラム「夏のキャラバン」を行っています。被災地の若者を国外に出し、国際感覚を身につけて欲しいと思ったからです。これまで7回の夏のキャラバンに参加した子供は42名を超しました。当時は中学生だった子たちも、今年は大学生。フランス滞在を「生涯、心に残る思い出」と綴る彼らの感想文がボランティアスタッフの励みになっています。
私がもう一つ企画開催をしたのは、イシー・レ・ムリノー市のカード美術館で毎年開催する百人一首の競技かるたのトーナメントです。4年目の「PARIS KARUTA 2020」は1月12日に開催予定。400人を超す着物姿の日本文化愛好家が、畳の上でカルタを勢いよくはね飛ばします。平安時代などの和歌を記憶し、スピードを競う知的競技としてフランス人に愛好家が増えています。昨年近江神宮で行われた世界初の国別団体戦では我がフランスチームが優勝しました。マンガとは違う日本文化が浸透し始めています。