ボルヌ首相が1月10日に発表し、23日に閣議承認された年金制度改革法案に対して反対運動が高まっている。19日の全労組が呼びかけたデモには112万人もが参加。労組は31日に予定しているデモやストに続く抗議運動を計画している。
年金改革法案の主な内容(詳細はovniサイトを参照)は、定年退職年齢の現行62歳から64歳(2030年)への段階的引上げ、エネルギー企業や仏国鉄(SNCF)など有利な特別制度の廃止、満額年金受給資格者の最低年金を法定最低賃金(SMIC)の85%(月1200€に相当)にする、育児休業期間を保険料納付期間に含める、シニア雇用の促進など。政府は2030年に推定135億€に上る年金制度の赤字を解消し、同制度を救済するために改革が不可欠と強調した。
それに対し、全労組は定年64歳に猛反対。労組によっては60歳定年を主張し、残業時間などへの年金保険料免除制度の廃止、高額所得者の保険料率引上げなどによる赤字解消を提案し、SMIC同等の最低年金を要求。左派連合も定年引上げに反対のほか、不安定雇用の人や女性に不利と強く批判。保険料の雇用者負担増、企業の過剰利益への課税などで赤字を埋め、長く働いた人には60歳定年、満額資格者には最低年金1500€、そうでない人は1063€とするなど、計5680件の修正案を提出した。
19日の第1回目の抗議デモには、警察発表で全国112万人(パリ8万人)が参加した。主催者発表ではパリ40万人、全国200万人で、近年にない大規模な動員だ。SNCF、パリ交通公団(RATP)のストで公共交通が麻痺したほか、教師、仏電力会社(EDF)、エンジー(ガス)、トタル・エネルジーなどもストを実施。送電網会社(RTE)によると、この日は電力生産が5000MW減少し、与党議員を標的にした数時間の停電も起きた。
この抗議運動に対し、政府は法案改善の用意があるとしながらも、赤字解消のため64歳定年は譲れないとしており、労組や左派の主張と真っ向から対立している。2月の国会審議を経て3月成立を目指しているが、与党連合内でも法案内容が不公平との声もあるほか、改革賛成の共和党内にも反対意見があることから、先行きは読めない。国民の約7割が64歳定年に反対しており、左派は国民投票の実施を訴えている。
31日には労組、左派のデモ、全労組のストがある上、SNCFなどのストはそれ以降も続く可能性がある。さらに製油所や教育、医療、エネルギーの分野でもストが予定されており、電力やガソリンの供給への影響も懸念されている。(し)