Germon(thon Blanc) à l’escabèche
ブルターニュ沖合いでとれるマグロはgermonあるいはthon blancという。ブルターニュの魚屋の店頭を飾っている魚だが、パリの魚屋でもときどき見かける。バラ色がかった白い身は、適度に脂がのっていて、焼いたり、刺身やカルパッチョにしたり、どう料理しても美味。たくさんの野菜と煮込んでから冷まして味わったら、想像以上にうまかった。もちろん赤身の本マグロでもおいしくできる。
2センチくらいの厚さに輪切りにしてもらうのだが、どちらかというと小型のgermonなら2切れか3切れ、大型の本マグロなら1切れ買ってくる。
まず野菜の下準備だ。玉ネギは薄切り、ニンジンは輪切り、セロリは小さく切り分け、ニンニクはみじん切りにする。ソトゥーズあるいはココット鍋のような底が広い鍋にオリーブ油を約1カップとり。まず玉ネギ、ニンジン、セロリを弱火でゆっくりと炒めていく。これだけオリーブ油を入れるのは、マグロをしっとり煮上げるための秘訣です。5分ほどたったらニンニクも加え、玉ネギの量が半分くらいになって軽く色がついてきたら、さらにオリーブ油半カップ、水か、あったらフュメ・ド・ポワソンを加える。さらにトマトピューレも入れ、唐辛子粉poivre de Cayenneも加えて塩をし、よく混ぜ合わせ、再沸騰してからもう15分ほど火を通していく。
冷蔵庫から30分ほど前に出しておいたマグロをいくつかに切り分け、柔らかくなった野菜の合い間に重ならないように置き、白ワインを注ぐ。ここでふたをして15分ほど火を通せばででき上がり。そのまま冷ましてからタッパーに野菜ごといれて冷蔵庫へ。野菜やオリーブ油、白ワインの風味がしみ込んだ翌日が食べごろです。レモン、バゲットパンを添えて食卓へ。ワインはムスカデの白にしようかな。このレシピ、トルコのPalamut Papaz Yahnisiという魚料理を参考にしたもので、もともとはカツオを使っている。サバでもおいしくできると書いてある。(真)
4人分 : マグロの切り身600g、玉ネギ4,5個、ニンジン2本、セロリ2茎、ニンニク5-6片。オリーブ油約1カップ半、白ワイン1カップ、トマトピューレ大さじ4杯、唐辛子粉適量、塩
Thon
地中海でとれる本マグロthon rougeは数百キロにもなるが、大西洋沿岸の沖合いでとれるgermonはせいぜい30キロ程度で、ほとんどが 〈thon blanc〉と明記された缶詰になっている。フランスの魚屋ではどちらも輪切りの形で売られていることがほとんどなので、ちょっと刺身にしにくいのが難だ。フライパンで焼くときは、芯がほとんど生mi-cuitに焼き上げたい。ツナ缶を常備しておくと、ニース風などのミックスサラダに入れたり、パスタ用にトマトソースに混ぜ込んだりと大いに重宝する。
Carpaccio de thon rouge
図のようにマグロを四つに切り分けて、血合いを切りのぞく。これを薄くそぎ切りにするのだが、冷凍庫に20分前後入れておくと作業が楽になるだろう。大皿にオリーブ油を塗り、マグロをできるだけ重ならないように並べる。レモンのしぼり汁少々を混ぜ入れたオリーブ油を、はけでさっと塗り、コショウをひきかけ、塩の華を軽く振りかける。レモンのしぼり汁を入れすぎると魚が白っぽくなるので、あくまでも控えめに。皿をラップでおおって冷蔵庫に数時間入れておく。食べる直前に、バジリコのみじん切りを散らす。
Madrague
ブルターニュでとれるgermonは、はえなわ漁なので魚が傷まない。ガスコーニュ湾や地中海でとれる本マグロは、ほとんどが巻き網漁で、幼魚までとってしまうこと、網の下方のマグロはほとんど圧死状態で質が悪くなるなどの欠点がある。シチリア島では、最近は少なくなったが定置網漁 (仏 : madrague)で、幼魚は入り込まないし、捕獲数も限られるなどの長所がある。
ロッセリーニ監督の名作 『Stromboli』には、逃げ場のないところに追い込んだマグロを、漁師が大鈎 (かぎ)を使って船上に勢いよくとり込んでいく様子が描かれている。海はマグロの血で真っ赤になるという。