タイトルの「Rodeo」は暴れ馬に乗るカウボーイの伝統競技ではない。ここでは 「アーバン・ロデオ」や「クロス・ビチューム」などと呼ばれる、公道での二輪や四輪のアクロバティックなレースを指す。主人公はこのアクティビティに魅せられた若い女性ジュリア(ジュリー・ルドリュ)。 “ジェンダーニュートラル”を体現するような彼女が、男性ばかりのアーバン・ロデオのグループに加わる物語だ。触れたら火傷しそうな火の玉娘のエネルギーがシネマスコープサイズいっぱいにあふれる。
監督は本作が長編第1作目のローラ・キヴォロン。監督本人もアーバン・ロデオが盛んなパリ郊外エピネー=シュル=セーヌ出身。郊外はまさに彼女の庭であり、長期に渡るライダーとの交流の中で生まれた作品である。監督の声がけでイキの良い本物のライダーがこぞって出演している。
カンヌ映画祭「ある視点部門」に出品され、審査員ク・ド・クール(一目惚れ)賞を受賞。続くシャンゼリゼ映画祭では批評家賞と最優秀監督賞をW受賞するなど評価が高い。昨年のカンヌ映画祭パルムドール受賞作『TITANE/チタン』のように、女性監督によるジャンル映画の系譜に置けるが、時代の自然な要請で誕生した作品と言えそうだ。
ただし、本作は劇場公開を待たずに論争に巻き込まれている。昨今アーバン・ロデオは事故の頻発で問題視されているが、監督はインタビューで「事故の責任は警察にある」と語って批判を受けたのだ。しかし、発言は文脈を無視されて拡散されたものであり、ネット世界の危うさを感じさせた。映画ファンなら、まずは映画を鑑賞してからご判断を。筆者は監督を応援している。(瑞)9月7日劇場公開。
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https://www.allocine.fr/seance/film-298736/pres-de-115756/