「Douce France 優しきフランス」はシャルル・トレネがドイツ占領下にあったフランス国民を慰めた歌として有名だ。が、紹介する展覧会のタイトルはトレネの歌と直接には関係ない。展示名は、ロックグループ「Carte de séjour」がトレネの歌をライ調にアレンジし、ボーカルのラシッド・タハがこぶしをきかせて歌い大ヒットした 「ドゥース・フランス」(1986)に由来する。
タハの父親はアルジェリアが1962年に独立すると職を求めてフランスに渡り、その数年後、10歳のタハと母親も渡仏。アラブ人が警察によって殺害される事件が多発した70年代のフランスで、労働者や若者たちが抗議の声を上げ始めたのが、80年代になって「仲間に手を出すな」をスローガンとしたSOS Racismのような反人種差別団体の誕生や、マルセイユからパリまでの抗議行進「Marche pour l’égalité et contre le racisme」(1983)に発展する。
郊外の団地でのコンサート「Rock against Police」で移民の若者たちが歌い、「Mosaïque」のようなテレビ番組が彼らの音楽を少しずつ紹介するようになっていく。タハとカルト・ド・セジュールはそんな世代の代表的な存在であり、彼らの「優しきフランス」は “フランス版公民権運動” の讃歌となった。
展示は1960〜2000年までのマグレブからの移民たちと、彼らがフランスにもたらし、発展させた音楽史をたどる。最後はヒット曲 「Ya Rayah(国を出て行く君)」(Diwânに収録)の歌詞を見ながら皆で歌ったり、カラオケボックス、ダンスコーナーもあるのでお楽しみに。(5/8まで)
タハは1958年、アルジェリアのオランに近いサン・ドニ・デュ・シグに生まれ、パリ郊外リラで2018に没した。59歳だった。アーノルド・キアリ奇形を患っていたが心臓麻痺で睡眠中に亡くなった。
Douce France : Musée des Arts et Métiers
Adresse : 60 Rue Réaumur, 75003 ParisTEL : 01.5301.8263
アクセス : M° Arts et Métiers
URL : https://artsetmetiers.fr
6€/4€。5/1休。火〜日:10h–18h(金-21h)。