Festival des Hortillonnages d’Amiens
カテドラル(大聖堂)で有名なアミアンに、こんなのどかな場所があったとは…。静かに水が流れる湿地のあちこちに小島がある。小島はそれぞれ、野菜畑があったり、庭付きの民家が建っていたり、小屋のような民宿が建っていたりする。
アミアンの東に位置し、近隣の4つの自治体に接する湿地帯は、自然にできた場所ではない。ピカルディー地方を流れるソンム川から水を引いて、農業をするために中世に作られた人工的な土地だ。湿地の土には植物の生育に必要な栄養素がたっぷり含まれており、肥料なしで農業ができるのだ。
その湿地菜園で、2010年からアートと造園と建築の国際フェスティバルが開催されるようになった。小舟で運河を進み、畑がある小島に上がると、現代美術作品が現れる。アミアン文化センター館長が主導し、国が支援して、造園と造形の分野で活動する若手作家を励ます目的で始まったイベントで、初夏から初秋にかけて約4ヵ月間開催される。2017年からは、地域の自然遺産を保護しつつ観光を盛り上げるために、オー・ド・フランス地域圏が建築、造園、現代美術を合わせた企画に与える「アート&庭園」のラベルが付いている。今年は新作と、昨年までの作品を合わせ、50点近くが展示されている。造形作家だけでなく造園家も参加しているので、美術館で見る現代美術作品とは違い、植物を素材にした風景に溶け込むようなものが多い。
隣町カモンで電動の小舟を借りる(湿地観光の舟とは発着場が違うので注意)。特定の作品を目ざして行くよりも、気に入ったところで上陸して、目にした作品を楽しむという、のんびりした散策を薦めたい。
造園家のヨースト・エメリックが作ったのは、「花狩り Chasse aux fleurs」と題した庭だ。小屋状のオブジェが植物で覆われており、周囲に花が咲く植物が植えられている。季節とともに盛りになる植物が違うので、異なる様相となる。作品名を示す立札がないので、通った後でパンフレットを見て 「作品だったのか」と気付くこともある。コレクティフ・ガンマという2人組の造園家が作った「断片Fragments」がそうだ。金属のテーブルと椅子が水辺に置かれ、上から大きな苔玉のようなものが下がっている。造園家の作品にはクセがなく、控え目な美しさがある。
今年から美術学校の学生もフェスティバルに参加できるようになった。今年一番印象が強かったのが、学生たちが作った遊び心がある作品だ。4人の学生グループが作った「待ちながら En attendant」は、既存の小屋のなかに、2人分の家具を入れ、薪を積み上げた高い塀で囲った。出入口はなく、中を見るには梯子に登らなければならない。コロナ禍での外出禁止中に構想したという。ワクワクしながら塀の中を覗く。誰もが子どもに戻って楽しめる作品である。
アート作品や、ゆったり泳ぐ白鳥やカモを見ながら湿地で過ごす1日。時間が緩やかに過ぎていく。(羽)
INFORMATIONS
アミアンはパリ北駅からT E Rで約1時間10分。
● Office de Tourisme d’Amiens Métropole
23 place Notre Dame 80000 Amiens
Tél 03.2271.6050
◎ Association pour la protection et la sauvegarde du site et de l’environement des Hortillonnages
(*)湿地菜園保護協会の事務所。フェスティバルとは別に、この協会の人が湿地帯を小舟で案内してくれる。
(フェスティバルの作品がある島には上陸できない)。
4月1日〜10月31日は 毎日9h-12h/13h30-18h。
大人5.90€ /11-16歳5.20€ /4-10歳4.10€ /4歳未満無料
54 bd Beauvillé 80000 Amiens Tél 03.2292.1218
www.hortillonnages-amiens.fr
◎ Festival international de jardins Hortillonnages Amiens
アミアン湿地菜園国際フェスティバル10/18(日)まで。
www.artetjardins-hdf.com
・カモンの船着場で電動ボートを借りて島々を回るのがお勧め。見学は無料。アミアン駅から船着場までバスが出ている(7、11番)。
Port à fumier : 35 rue Roger Allou 80450 Camon 水-金 13h-19h 土-日10h-19h
電動ボートは予約制。1舟5-6人まで。1回2時間半。
人数により19€-29€ +1人につき1€の納付金。
予約は上記公式サイト、又は Tél 06.7853.5592