春の町で子どもたちがスズランの花を売る姿は、毎年5月1日の風物詩。ふだんなら路上で物を売るには許可が必要だが、この日だけは例外だ。森でスズランを摘むときは翌年も咲くよう根は残すこと、花屋さんから離れて売ること、売るのはスズランのみ…など規則はあるものの、この日ばかりは大人も子どもも一般市民がスズランを売ることが許される。
ところがこんな伝統も、今年はコロナウイルスでご法度だ。スズランを摘みにも行けないし、路上で売ってもいけない。当初は花屋さんでさえ、配達か予約の店頭引き渡しのみ、とのお達しだったから、7〜8割がスズラン畑で摘まれないまま枯れていくだろう、と言われていた。それが、前日の4月30日午後にようやく内務省が販売を許可し、店は閉めたまま、店の前でなら販売してもよいことになった。急な許可だから全てが出荷はされないとしても、無駄は減るかもしれない。
5月1日のもうひとつの伝統、メーデーのデモも今年は中止。とはいえ通信技術の発達でインターネットやソーシャル・ネットワークを使った集会や、バルコニーや窓の手すりにスローガンを掲げる意思表明が呼びかけられている。外出規制のもと人々は窓辺で拍手したり歌ったり踊ったり音楽を奏でたり「窓」を表現とコミュニケーションの場とするようになった。5月1日、フランスの家々の窓辺にはどんなメッセージが花開くのだろう。(集)