Q:神戸のモンテはどうでしたか?
滑浦:すごく変わったお客さんがいましたね。すごくアーティスティックな人、よくわからない人が多かったです。
Q:神戸の、地元の人ということですよね?
滑浦:そうですね。まあ、関西圏、東京、北海道などいろいろなところから来ていましたけれど。
Q:それはみなさん噂を聞きつけて?
滑浦:多分雑誌に載っていた写真などに惹かれてじゃないかと思います。いや、わからないです、なんでか、ということは。もちろん口コミということもあると思います。色々あるじゃないですか、食べログとか。僕はああいうのはあまり好きじゃなくて、なんか適当に書かれているな、とは思っていましたが。それよりも新しいものを見つけたい、という人が来てくれたんじゃないかなと思います。
Q:じゃあ広告などは一切打たずに?
滑浦:最初は打ちましたけれど、誰も見向きもしないのでやめました。みんなやっぱりネームバリューのようなものが好きで「どこどこでやってました」ということがないと来ないんじゃないかな、とは思いました。
Q:どういうことでしょう?例えば「デュカスさんの店で何年働いていました」というようなことですか?
滑浦:そういうのが好きなんでしょうね。例えばデュカスの店の料理が1/3の料金で食べられるというようなことがいいんじゃないですかね。みんなそういうことを書いていますしね、僕も書こうかなと思ったんですけれど、まあ大したことないので、書いてもな、と。とはいえ「大したことない」と言うのは失礼ですね、お世話になった人がたくさんいるので。
Q:では、まずはそのお話から伺いましょうか。滑浦さんと料理の関係というのは、いつ始まりましたか?ご実家が兼業農家をしているということとは関係がありますか?
滑浦:いや、あまり関係はないです。
Q:ではなぜお料理に行こうという気持ちになったんでしょう?
滑浦:うーん、まあ僕自身がとても個性的だった(笑)というか、変わった人間だったからというか、人とはいつも違うことをしていたんです。
Q:あまのじゃく。
滑浦:まあ、今でも似たようなもんです。
Q:ご自身があまのじゃくだと思う例を何か挙げていただけますか?
滑浦:たとえば人と集まるのが嫌いだった。
Q:するとクラブ活動なんかはしたことがない?
滑浦:いや、クラブ活動はしていましたよ。
Q:すると、人とつるむのは好きだったんじゃないですか?(笑)
滑浦:いや、それはつるむのが好きだったからじゃなくて
Q:何をしていらしたんですか?
滑浦:サッカーです。物心がついた時からやってました。
Q:ボールを蹴っていた?
滑浦:うん、一緒に遊んでいた近所の年上の子供達がみんなサッカークラブに入っていて、友達も一緒にみんなでやろうと。田舎だったので小学校では1クラスに男女合わせて20人しかいなかったんです。試合は学年別になっていたので、全員が参加しないと試合ができない。上の学年や下の学年が混ざったりするけれど、一応4年生は4年生だけで試合をすることになっていたので、僕は好きでやっていましたけれどやらなきゃ仕方ないという感じでした。
Q:サッカー以外には?
滑浦:何もしたことがないですね。
Q:野球は?阪神が近くにあるのに。
滑浦:いや、サッカーで朝練から放課後の練習まで時間を取られていました。弱かったけれど、個人個人の技術はすごいんですよ。
Q:ドリブルがたくさんできちゃうぐらいの?
滑浦:そうです(笑)。みんな上手でしたよ。中学に行っても続けたんですが、僕は華奢だから体の大きな人にはかなわない。そこで随分と挫折を味わいました。 3年間続けたし、新聞にも出たりもしましたけれど、結局は自分には向いていなかったということです。
Q:そして料理はいつから?
滑浦:初めて料理を作ったのは…
Q:家庭科の授業はありましたよね?
滑浦:あー、あの時代はなんでも自信はあるほうだったのでできると思ったんですが、結構授業ではできませんでした。家では結構作っていたんです。
Q:中学生時代に?
滑浦:いや、小学生の時から自分で卵焼きやオムライスなど簡単なもの、野菜炒めを作ったりしていました。
Q:オムライスは結構難しいですよね。そういう料理は、テレビなどから見よう見まねで?ご家族の中に料理好きがいたとか?
滑浦:兄貴が料理上手だったんです。上手というよりも、兄よりも僕はなんでも下手だった。
Q:お兄さまとは幾つ違いですか?
滑浦:二つ違いです。まあ当たり前ですが勝てるものは何もなかった。
Q:学校で嫌じゃありませんでした?小中学校と同じでした?
滑浦:ええ。
Q:「お前はあいつの弟だろう」って言われませんでした?
滑浦:はい、おまけに僕らはすごく似ているんです。で、いつも「弟、弟」って言われるのがすごく嫌で(笑)。
Q:でしょう?私も一つ上の兄と高校でようやく別れた時にホッとしました。
滑浦:嫌ですよね。兄のほうが僕よりも料理が上手だったというのは、コンプレックスになりました。スクランブルエッグを初めて作った時、今でも好きで作りますが、ごま油でつないで作るんです。僕が作るとボソボソになって、フライパンにベターっとくっついてしまうんですが、兄が作るとフワーッと上手にできる。なぜ違うんだろう?なぜ同じようにできないんだろう?と、負けず嫌いだったので何度も練習しましたね。何をしても結構最初は兄に負けるんですよ。僕は左利きなので、右利きの人に教えてもらってもできないことが多い。どうやってもできないので、自分で考えてやるしかない。その卵の時も「なぜダメなのか?」と考えて、油の量が多いとか少ないとか加減しながらうまくできるようになった時に「あー、大したことなかったんだ」と(笑)。たまたま兄貴のほうが上手くできただけで、自分にもできるんだという自信が持てました。自分なりのやり方を編み出していかなければならない、という考えはその時から今にまで生きていると思います。
Q:お兄さまは料理には進まなかった?
滑浦:ええ、不思議なことに全然違う仕事をしています。
Q:よかったじゃないですか、お兄さまが料理に行っていたら、滑浦さんは料理をしていなかったかもしれない。
滑浦:そうですね。僕はあまのじゃくなんで。
Q:ほら、そうでしょう(笑)。
滑浦:ただね、負けたくないという気持ちがもしかすると作用して、兄よりも俺の方が上手いだろう、という気持ちが動いていたかもしれないです(笑)。
Q:ライバル意識が燃えるかもしれない。
滑浦:どっちかです。
Q:中学の後は普通の高校へ進学されて?
滑浦:そうです。公立の共学校へ行きましたが、とても自由な学校で、個性的な人が集まっていました。
Q:神戸にあった?
滑浦:神戸の山の上のほうです。スズラン(鈴蘭)台という場所です。
Q:名前からして、サリーちゃんのお話に出てきそうな学校ですね。スミレちゃんが通っていそうな。
滑浦:学校には本当に個性的な人間ばかり集まっていました。そこに僕が入った時に自分はなんて地味なんだろう、と思いました。自分には何ができるんだろう?と思って、みんなと仲良くしながら自分にできることを探していた時に「あっ、料理をやってみようかな」と、あまのじゃくなので、誰も行かない道だったからだと思います。
Montée
Adresse : 9 rue Léopold Robert, 75014 ParisTEL : 01.4325.5763
URL : www.restaurant-montee.fr/
火-土12h-14h / 19h30-21h30 昼のコースメニュー40€(4皿と2デザート) 夜のコースメニュー80€(7皿と3デザート)