『Tour de France / ツール・ド・フランス』といっても自転車ロードレースの映画ではありません。フランスを一周しないまでも大西洋岸から地中海岸まで港町を旅するロード・ムーヴィー、かと言って、のどかなだけの映画でもありません。
人気ラッパー、ファウークは地元の仲間から妬み半分の厭がらせを受け、しばしパリを離れることに。それならと、マネージャーのビラルが地方に住む自分の父親の面倒を代わりにみてくれと提案する。その父と息子は、息子がイスラムに改宗したことで関係が拗(こじ)れている。隠居生活を送る偏屈者の父セルジュの夢は、18世紀の画家、ジョゼフ・ヴェルネの足跡を辿ることだ。この画家はルイ15世の命を受け『フランスの港』という連作を手がけた。セルジュは、彼の描いた風景を自分の目で確かめ自らの画布に写生したいのだ。ファウークは彼のドライバー兼アシスタントとして旅のお供をすることになる。
セルジュは普通に(?)レイシストである。自分とは異なるもの未知なるものを受け入れられない小市民だ。しかし、アラブ系フランス人のラッパーなどという、自分とは異次元の世界から来た青年と1対1の人間同士としての付き合いを余儀なくされるうちに、彼に対する友情のようなものが知らずに芽生えている。人情は人種差別の壁を越える!これがこの映画の核心か…。
セルジュ役のジェラール・ドパルデューが、今さらながら素晴らしく、感動的だ。やはり彼は、彼の役者としての感性は、天性のものでフランスの人間国宝にしたい。ファウーク役のサデク(Sadek)は実際のラッパー。暖かみのあるキャラに好感がもてる。監督のラシド・ジャイダニは、映画スタッフ、俳優からプロボクサーになり、9年かけて『Rengaine / 決まり文句』(2010)という映画を自主制作し監督デビュー、高い評価を受けた。前作も本作も “偏見” への挑戦。彼のように、上から目線ではない、主題と同じ立ち位置に居る監督たちの活躍に今後の期待がかかる。(吉)
