1938年から1948年までのエジプトの前衛芸術運動を紹介する展覧会である。当時エジプトは英国の植民地だった。植民地主義と、それに対抗するエジプトの愛国主義の影響を、芸術ももろにかぶり、美術家、作家を巻き込んだ芸術運動が繰り広げられた。展覧会の題名は芸術運動「芸術と自由」から取られた。国による「官製」展覧会と、政治との密着を拒否し、シュルレアリスムの影響を強く受けた前衛運動だ。エジプト人が第二次大戦に駆り出され、戦争の悲惨さを味わったことも題材になった。外国のアーティストとの交流も盛んだった。マヨのように、1920年代にモンパルナスで活動した画家もいる。「芸術と自由」創立に関わった詩人、ジョルジュ・ヘナンの国際交流図には岡本太郎の名前も出てくる。やはりモンパルナスにいたアメリカ人写真家、リー・ミラーは一時エジプトに住み、シュルレアリスムとの橋渡しをした。アーティストたちの交流と当時の国際政治が大きな渦となって見えてくる。この展覧会を見て、美術史を見る目が変わるだろう。(羽)
ポンピドゥ・センター2017年1月16日まで。 (火休)