〜テロの影響で客足激減〜
相次ぐテロの影響で、パリの観光業が危機に陥っている。パリ観光局のまとめによると、今年1〜7月までのパリと近郊地域の外国人宿泊者数は595万6000人で、前年同期に比べ11.1%減少。このうち最も減少幅が大きかったのは日本人観光客で、47.2%減少した。
パリと近郊地域の外国人宿泊者数は2013年から下降を続けているが、2015年以降の度重なるテロで、観光局では回復が見込めていない。今年10〜12月のホテルの予約件数も、9月末時点で、57万5千件と前年同期比で16%減少。国籍別で最も減少幅が大いのは日本人で、51.2%と激減。リベラシオン紙(10月31日付)は、「観光業、非常事態」の見出しで窮状を伝えた。
同紙によると、商業施設やホテルのほか、美術館も入場者数が激減。年間800万〜900万人が訪れ、そのうち75%が外国人観光客のルーブル美術館では、2016年の上半期の入場者数が前年同期比で20%減少。特にアメリカと日本からの客足が減ったという。オルセー美術館は18%、ヴェルサイユ宮殿は14%、昨年11月以降の入場者数が減っている。セーヌ川の観光船〈オ・ヴデット・ド・パリ〉も乗客が20%以上減少した。南仏ニースでテロ事件が起きた7月も、乗客が激減したという。
特に日本からの観光客が激減している理由を、パリ観光局では「世界各地でテロが起き、治安に対する不安感から、海外旅行を控える傾向にある。2016年はじめにシリアで日本人2人が殺害されたことで、この不安感がさらに強くなった」と分析している。
一方で、一部の関係者は、テロ以前から、スリやひったくり、暴力行為を伴うデモなどの悪評が、ソーシャル・ネットワークなどで広まったことも背景にあると指摘している。
深刻な状況を受け、イル・ド・フランス地域圏は、クリスマス・シーズンに観光客を案内するための英語のできるボランティア200人を採用する予定だ。また治安向上を目的に、来年、観光地に「移動警察署」を設置する計画もある。
フランスの観光業は国内総生産の7.4%を占め、1583億ユーロをもたらす重要な産業(2014年、経済省企業総局発表)。この危機を契機として、観光資源の見せ方や観光客のもてなし方を見直し、フランスやパリの観光地としてのブランド力を、新たに発信することが求められている。(重)