7月13日、コルス北部シスコ村の海岸にモロッコ人家族が水浴に来ていたところ、地元の青年がスマホで妻のニカーブ(目だけを見せるベール)姿を撮ったので夫が抗議し衝突、地元の若者らも加わり、3台の車が炎上するなど暴動化(5人逮捕)。翌日バスチアの広場に地元民が集まり「ここはわれわれの地だ!」とシュプレヒコールを響かせた。
7月14日ニースのトラック暴走テロ(86人死亡)、26日サン・テチエンヌ・デュ・ルヴレ教会での高齢神父の斬首テロなどのショックが消え去らないなか、海岸での暴力事件はモロッコ人と島民の摩擦の表れか。マグレブ移民が島民32万人のうち2万2千人、その60%を占めるモロッコ人と島民とは、一触即発の関係にある。
「イスラム国」戦士らの単独テロの脅威に市民が神経を尖らせているなかで、カンヌのリスナール市長は7月28日、「海岸での全身を隠すブルキニは宗教的誇示」として禁止条例を出した。「フランスのイスラム恐怖症に反対する団体」や「人権擁護連盟」が、自由侵害としてニース行政裁判所に提訴したが却下された。最終的には国務院が8月26日、自由の原則に反するとしてブルキニ禁止条例を却下した。
今年3月にH & Mが「ピュディック(恥じらい)モード」と名打ってイスラム・ファッションのコレクションを発表したとき、哲学者エリザベート・バダンテールはユニクロやマークス&スペンサー他のコレクションをボイコットすべきだとル・モンド紙で呼びかけた。イヴ ・サンローラン財団のベルジェも嘆く、「モードを否認するイスラム社会にクリエーターがしっぽをふる必要はない。モードは女性解放のためにあるのであり、男性に隷属する女性をさらに拘束すべきではない」と。今夏、ブルキニ禁止条例は仏北部にも及び、約30の海岸に波及。ヴァルス首相もこの条例に賛成し「ブルキニは女性の男性への隷属のしるし」と表明。オランド大統領は、当たらず触らず。テレビでインタビューされた若いマグレブ女性は「今まで海岸にも行けなかった。ブルキニなら安心して海に入れる」と喜んでいた。では一糸もまとわないヌーディストビーチはどうなのだろう。公序良俗の基準がわからなくなる。ブルキニに対する市の条例は、1990年ニカーブの公共の場での禁止法に次ぐ。市長らはブルキニの裏に、サラフィズム(イスラム原理主義)が潜むことを警戒するのだろうか。(君)