
Libération (16-6-13)「塞がらない新しい傷口」。
ラマダン(6/6-7/5)中の6月11日深夜、米フロリダ州オーランドの同性愛者の集まるナイトクラブで、アフガン系米国人マティーン容疑者(29)が銃を乱射し、49人を射殺、50人を負傷させた。この自国民による 「国産テロ」の48時間後、仏イヴリーヌ県では、R.アバラ容疑者(25)が警官夫婦を自宅で刺殺後、警察に射殺された。
6月28日夜、イスタンブール空港ではテロ犯3人が銃乱射と自爆で44人を殺害、240人余が負傷。7月1日、バングラデシュの首都ダッカのレストランでは外国人観光客を狙った7人組(うち6人射殺)が、20人(日本人7人、イタリア9人ほか)を殺害。7月1-2日、バグダッドの中心街では爆発物を載せたトラックが爆発、死者は今年最高の210人余におよんだ。5月以来「イスラム国(IS)」によるバグダッドでの連続テロは、イラク軍が中部都市ファルージャのIS基地を全滅させたことへの仕返しとみられる。
ISは、シリア政府軍や連合国空爆によって陣地が縮小されつつあるなかで「世界中でジハーディスト(聖戦戦士)によるレジスタンス」を呼びかけ、ラマダン時期に個別テロを奨励したとみられる。自爆か、米国のように誰でもが買える自動小銃で各々がテロを起こせ、これほど安上がりな対西洋戦争はないだろう。「神のための殉死を望む」テロ犯のほとんどは、自爆か警備隊に殺されているから、各地に出没するネズミの退治に似ている。米大統領選共和党トランプ候補は待ってましたとばかり、テロリズムの根源は「ムスリム移民」にあるとし、アラブ系移民の入国禁止を力説する。が、欧米生まれの移民2世、3世の大半はモスクではなくウェブでジハードのイデオロギーを頭に叩き込む。
テロの対象が同性愛者に及んだのも注目すべき。国連の94の加盟国が同性愛者の人権を認めているが、中東諸国など54カ国は認めていない。エジプトの同性愛者は、1〜5年の懲役刑。同性愛はイスラム教では「悪」とみなされる。ほとんどの西洋の国が認めている同性婚も、イスラム教は敵視する西洋文明の一要素とみなすのだろう。
7月2日、ルーヴル河岸からバスティーユまで行進した恒例のゲイプライドはオーランドのテロの犠牲者に捧げられた。(君)
