「牛のスターは20年に一度、出るか出ないか。」
マナディエ(manadier /カマルグ地方で牛や馬を育てる人)のジャック・マイヨンさん
カマルグ式闘牛に参加できる牛を育てるのが、私の大事な仕事。最も難しいのは優秀な牛を見極めることでしょうか。また怪我をさせずに、よく運動させないといけません。草のある場所へと移動させますが、人間と同じで牛はいつも同じ場所にいるのは好みません。現在400頭の雄牛のほか、子牛やカマルグ馬も育てています。
牛のスターを輩出できるのは20年に一度あるかないか。我がマイヨン家からは父が育てたラミがいます。彼には立派なお墓も建てました。現在はドーデやキトーがスター候補。キトーは今度、コカルド・ドール(カマルグ式闘牛のメインイベント)に出ますよ。カマルグ牛として生まれても、優秀でなければ一生は飼っておけず屠殺場送りとなります。ただし練習試合に出すことで、全ての牛にチャンスを与えています。やはり試合で全く動かない牛はダメですね。
牛には名前を付けますが、付け方は様々。ニームから来たからニモア、春生まれだからプランタン。人間を転ばせたて尻もちをつかせた牛はプロヴァンスの言葉で 「お尻を濡らさせた」という意味がある 「キウ」。ジャーナリストが来た時、カメラを角に引っ掛けて持っていってしまった牛は「フォトグラフ」(笑)。彼らはそれぞれ個性があるし、見た目は真っ黒でも私には一目で見分けがつきます。
私は両親ともマナディエの家系で、幸い子供たちも動物と自然が大好き。伝統を継ぐ家族がいるので安心しています。
www.manadejacquesmailhan.com
証言! 私は見た、忘れられないカマルグ牛のスター。
カマルグ式闘牛は、まれに偉大なカマルグ牛のスターを誕生させる。彼らは伝説の牛として銅像や墓を建てられ、後世まで語り継がれる存在だ。
以下の牛のほか、20年代に活躍したサングリエ(Sanglier)、50年代に活躍したヴォヴォ(Vovo)などが有名。闘牛場や公道など、各地でスター牛の銅像が見られる。
● ゴヤ (Goya/1963-1985)
1976年にビョウ・ドール (Biòu d’or /年間最優秀牛賞)受賞。
《アルル・ラズトゥール学校代表ジャン=ポール・マラニョンさんの証言》
彼ほど賢い牛は見たことがありません。試合中も周りが見えていて、ラズトゥールが立つ場所を記憶し振り返って追いかけるのです。人気も絶大で、彼の試合を見るためチケットを買う長蛇の列ができました。
● ラミ (Rami/1964-1987)
1969年と71年にビョウ・ドール受賞。
《ジャック・マイヨンさんの証言》
普通の牛は5歳から15歳くらいまで試合に出ますが、ラミは3歳から始め、18歳まで現役。彼の人生すべてが別格でしたね。まず見た目が美しく、体格と角が立派。性格は獰 (どう) 猛ではありませんが、瞳だけで見る者を圧倒させ、恐れさせました。闘技場内の動きに長けていて、壁もしょっちゅう飛び越えていました。