カマルグ式闘牛を観戦しよう。
● カマルグ式闘牛とは?
カマルグ式闘牛 (la course camarguaise)は、雄牛を使った南仏プロヴァンス地方の伝統スポーツ。アルルやニームを含むバス・プロヴァンスやラングドック=ルシヨン地域圏で盛んだ。カマルグ牛と人間が円形闘技場で闘う。一見コリーダ(闘牛)と似ているが、最後に牛は殺さない。「死を介した芸術スペクタクル」とも表現できるコリーダに対し、カマルグ式闘牛は国から認定を受けたれっきとしたスポーツである。
● カマルグ式闘牛のルール
試合に登場するカマルグ牛は6頭で、1頭の持ち時間は15分。基本ルールは牛の頭部に付けられたアトリビュ(attributs)と呼ばれる紐やリボンを、牛の攻撃をかわしながら奪い取るというもの。牛に立ち向かう競技選手ラズトゥール(raseteur)は、専用の引っ掛け金具を持つ。また試合がスムーズに行われるように、牛に合図をし誘導する、ラズトゥールの補佐役トゥルヌール(tourneur)も、場内に数人配置される。闘技場内はラズトゥールとトゥルヌールを合わせ、合計で数十人の白いユニフォームを着た男性がいる。大きな試合には人数がさらに増える。最初にアトリビュに懸賞金が割り当てられているが、試合中にはスポンサーが株価のようにアトリビュの点数を上げていくため、難しい試合には懸賞金が増えていく。簡単にラズトゥールにアトリビュを取らせなかった勇敢な牛には、試合の最後に大きな拍手が送られ、『カルメン』の音楽で堂々と退場する。
● カマルグ式闘牛のミニ歴史
1402年にアルルの闘技場で、プロヴァンス伯爵に敬意を表し開催された試合が最も古い記録とされる。1890年代になると、ようやくカマルグ産の牛が、体格や闘争心が試合にふさわしいと認識されるように。20世紀初め頃から、牛の角に付いたリボン飾りを奪い取った選手に賞金を出し始め、以後はアトリビュの数も増える。1928年からカマルグ式闘牛のメインイベントとなる大会コカルド・ドールが開始。1960年代頃には細かなルールが定まり、1975年にカマルグ式闘牛協会が発足。同年11月に国からスポーツとして認可を受けた。
● カマルグ牛
主に南仏の湿地帯カマルグ地方で野生に近い状態で育てられる牛。スペインの牛よりやや小ぶりだが、血気盛んで賢く敏しょう。大抵は黒毛で、空へ伸びた立派な角を持つ。現在約150人の生産者により、約1万8千~2万頭が育てられている。
カマルグ式闘牛の試合に出る牛は、ポスターにも名前が掲載される。コリーダの場合は人間のマタドール(闘牛士)がスターだが、カマルグ式闘牛においては牛こそがスターとみなされる。地元メディアはラズトゥールよりも牛の才能について話題にすることが多いほど。ただし試合に出られない牛は、AOC(原産地統制呼称)の認証を受けた美味しいお肉となり、料理されて食卓行きとなることが多い。
● カマルグ地方
アルル以南から地中海にかけ、ローヌ河が分岐した三角州に広がるフランス最大の湿地帯。広さ約10万ヘクタール。米や塩の生産で名高い。牛や馬、ピンクフラミンゴをはじめ多くの動植物が生息し、自然保護地域に指定される。