Q:良い場所が早く見つかるといいですね。
守江:そうですね。あとはお金をどこから調達するか、です。日本人にはあまり貸してくれないと聞きますけれど、僕の妻はフランス人なので貸してくれるかなあ。彼女は産休を終えて今月からまた仕事を始めました。
Q:おめでとうございます!お子さんは男の子、女の子?
守江:6か月の男の子です。
Q:じゃあ保育園に?
守江:そうです。今日はこれから迎えに行きます。
Q:そうか、だから4時まで、ということだったんですね。可愛いでしょう6か月。
守江:可愛いですよ!子供のことを考えて自分で店を出したいと思ったんです。とはいえここもオーナーがあまり干渉しないので自由にさせてもらっていますけれど。
Q:最初電話で話をした男性でしょうか?
守江:そうです。店の電話に誰も出ないと彼の携帯に転送されるようになっています。
Q:私も知らない男性から電話で「先ほどAuberge du 15に電話されましたね」と言われてはじめびっくりしました。
守江:いい人ですよ。週に3度ぐらいしか店には来ませんけれど。
Q:でも、自由にやらせてもらいながら自分のお店を探して、見つかったらそっちへ移行できるなんていいじゃないですか。
守江:よくそう言われますけれども、働きながらだと大変なんです。一度休眠をして、落ち着いて次を始めた方がいいんじゃないかなと自分では思っています。
Q:そろそろお迎えの時間が近づいてきたので、最後の質問にします。ご自分にとって料理とは何ですか?
守江:料理?うーん、何だろう。
Q:例えば料理人になっていなかったら自分は何になっていたんだろう?と思ったことはありますか?
守江:それは考えたことはないです。逆に明日から目が見えなくなったら何の仕事をしようか?と思ったことはあります。鼻が利かなくなったら、味がわからなくなったりしたら、ということは考えます。
Q:料理人には五感が大切?
守江:料理に対しては自分の五感を使って真摯に仕事をしたいなと思っています。でも、料理って何なんですかね。生活の一部でもあり、まあ真面目にやっていると自分の全てが出ますよね。だから不器用な方が自分らしい料理を作れるんじゃないでしょうか。要領がよくて作業的にやっていると料理も面白みがないし、作り手らしさが出ないでしょうし。僕が行く店にお客さんが付いてきてくれるというのは、僕らしさが料理を確認できるからじゃないかと思います。そういう人たちに対してもちゃんと料理をしたいな、と思っています。それが僕の考える料理です。料理で生活していますし。
Q:常連さんから「変わったね」と言われたことはない?
守江:言われたことないですね。むしろ「変わらないね」と言われます。ある常連さんには「来る度に美味しくなっている」と言われました。でもそれはどうなんだろうなー、とも思ったんですが、相性がいいお客さんがいるのは嬉しいことですが、そういう風に感じないお客さんがいて当然です… コミュニケーションなんですかね、料理って。
Q:料理はコミュニケショーンの手段?
守江:そうですね。 僕と素材とのコミュニケーションはしっかりできているので、お客さんとも料理を通じてコミュニケーションは取れているんじゃないかな、と思っています。
Q:なるほど。素材や料理を通じてお客さんとコミュニケーションをとる?
守江:わかる人はわかってくれていると思います。最近また来てくださったお客さんが「初めて来た時にとても良かったので、2度目に来るのが怖かったのだけれど、期待をはるかに超えるぐらい満足した」と言ってくれました。僕は同じベースで飽きないようにバリエーションをつけて作っていますから、お客さんも飽きることはないと思います。僕が飽きてしまったら、お客さんも飽きてしまう。こうしていろいろ考えると料理を一言で言うことは難しいですね。言えないです。
料理とは「ことわり(理)をはかる(料)」と漢字で書く。このことは他の料理人さんも言っていることですが、僕もこのことを意識してはいます。
でも、僕にとっての料理とはやっぱりコミュニケーションでしょうね。それでも一言で言ってしまうと、料理に奥行きが出ないんじゃないかとも思います。
昔は料理のことばかりを考えていましたけれど、最近は考えないようにしているというか考えられる時間もだんだん減ってきた。結局生活の一部になったということなのかな。
Q:料理のことばかりを考えなくなったということが、料理が守江さんの一部になった、ということなんじゃないですか?想像ですけれど。
守江:まあ、僕が自然体だということですかね。まあ生活環境が変わるといろいろな変化があります。
Q:お子さんが生まれて変わりましたか?
守江:変わりましたよ。今は子供の離乳食も作っています(笑)。僕の作ったものをよく食べてくれるんですよ。昨日はズッキーニとグリーンピースのピューレを作りました。前はそれほど食べなかったスープも妻が作ってくれたからこそ「おいしいな」と思えるようになった。スープにカボチャはよく使います。ブロッコリーとジャガイモの組み合わせも美味しいですよ… はい。
Q:お暇の時間が来たようです。長々とありがとうございました。
L’Auberge du 15
Adresse : 15 rue de la Santé, 75013 ParisTEL : 01.4707.0745
URL : www.laubergedu15.com/index.php
火-土 12h00-14h30/19h30-23h00 昼のセットメニューは39€と68€、夜のセットメニューは89€。