Q:守江さんが料理を始めたきっかけは?
守江:16歳の時に不器用な自分でもできるかもしれない、と思いまして。勉強もあまり好きじゃなかったし。
Q:ご出身はどちらですか?
守江:愛媛県の伊予西条です。
Q:みかんの美味しいところ?
守江:いえ、みかんはうちの方じゃなくてもっと南の方です。
Q:伊予柑を連想してしまったので… 失礼しました。まずは料理学校へ?
守江:そうです。大阪の辻調理学校へ行きました。1年通った後に淡路島で半年バイトをして、フランスへ研修生として来ました。リヨンの方です。
Q:ボキューズさんの店?
守江:いいえ、アラン・デュカス系のシェフで、現代のフレンチを学ぶという意味でとても良かったと思います。大きな店で、厨房には20人、菓子部門だけで10人いるという店でした。店自体は40席だったんですが、パーティーなどの宴会では250人分の料理を作るという規模です。そこではガルド・マンジェと魚部門で研修しました。
Q:どうでしたか、初めてのフランス?
守江:もう16年も前の話なのであまり覚えていません。ただ、部門長のシェフがMOF(フランス職人最高称号)を持つすごい人で、勉強になりました。
Q:その後大阪へ戻って就職を?
守江:大阪ではなくて東京です。まずは広尾にあったアラジンという店でしたが、厨房に空きがなかったのでサービスで入りました。厨房で働きたかったのでその後三田にあったコート・ドールへ行き、2年働いた後にまた別の店へ。日本で仕事をしたのは通算で8年です。本当は、リヨンの店に残りたかったんですが、研修生だったのでそのまま残ることができない。だから日本へ戻りましたが、26歳の時にやっぱりそろそろフランスへと思い、まずはパリへ来て働ける店を探しました。
Q:それが6 区にあるLe Petit Verdotだった?
守江:そうです。雇用の約束をもらってから一度帰国して、ヴィザが出るのを待つ間にパティシエの勉強をもう一度しようと思って働きました。デザートは学校で習ったし働いていた東京の店では作っていましたが、Le Petit Verdotというパリの店では僕が厨房ですべてを作る必要があるということがわかっていたので、デザートの部分をもう少し自分の中でしっかりやっておかなきゃならないという気持ちがありました。
Q:そしてヴィザが出てフランスへ。Le Petit Verdotというお店の規模は?
守江:20席ぐらいでした。
Q:確かソムリエの方がオーナーでしたよね。
守江:そうです、石塚(秀哉)さんです。彼はサービスを一人でやっていたので、厨房は僕がほとんど任せてもらっていました。1年目はアドバイスをくれましたが、2年目、3年目には「もう自分で考えてやっていい」という感じで、ありがたかったです。
Q:メニューもご自分で全部?
守江:1、2年目は「前から出しているこれとこれは続けてくれ」と言われましたけれど、3年目には「もうやめましょう」と僕が提案をして新しいものにしました。
Q:アラカルトでの前菜、主菜、デザートはそれぞれ何種類ぐらい?
守江:前菜5品、魚2種類、肉が4種類、デザートが4つか5種類。
Q:それを季節ごとに変えていく。日替わりもあった?
守江:はい、ランチメニューがあったので。
Q:一人で作るのって、大変だったでしょうね。
守江:大変でしたけれど、やりがいはありました。
Q:けれども店を移ろうと思った?
守江:5年働いたのでもういいだろう、辞めようと思いました。
Q:他のところを見てみたかった?
守江:まあ、ひとつの流れですよね。とりあえず辞めて次を探している時に知り合いから声をかけられました。「新しく店を始めるので、どう?」と。それがネオ・ビストロの
Q:ENCORE(パリ9区)だった?
守江:はい、そうです。でもなぜみんなENCOREのことを知っているんだろう?
Q:あの地区(Grand Boulevard界隈)には新しい流行のお店がたくさんあるじゃないですか。
守江:ENCOREは1日に60人から80人入っていた店ですが、調理場には2人しかいませんでした。最初は僕が一人でやっていましたし。
Q:売り言葉は確か « Cuisine d’amis »(友達の料理)ですよね?
守江:でも、値段はちっとも友達料金じゃない(笑)。オーナーが出したい料理と僕が作りたい料理にズレがあって、僕の料理を食べたいお客さんも来てくれていたのであまりうまくいかなかったです。
Q:どのぐらいの期間ENCOREで?
守江:7か月です。立ち上げを手伝った、という感じですね。
Q:ネオ・ビストロという言葉を使われたじゃないですか。守江さんにとってネオ・ビストロとはどういうお店ですか?
守江:落ち着かない、というかお客さんが「ノリ」で食べている感じです。食べている人も料理に集中できないですよね。その前の店Le Petit Verdotのお客さんもENCOREへ来てくれていましたので、店の雰囲気の違いには気付いたと思います。
Q:ガヤガヤした感じ?
守江:そうです。楽しくわかりやすい料理を食べる環境ではなく、ガヤガヤとワインを飲みながら食べる環境です。今のこの店は立地こそあまり良くありませんが、僕の料理を目的にして、常連さんも落ち着いて食事を楽しめる環境だと思います。ガヤガヤしている中で料理を作っていると、食べている人は分かって食べていてくれるのかな?と不安になります。「作る」という大変さは結局一緒なので、だったら食事を楽しんでもらうほうがいい。
Q:確かに店によっては何を食べたんだっけ?と思うことがあります。ガヤガヤ、ワイワイした場所で、テーブルでの話もよく聞き取れなくて落ち着かないまま店を出るということも。
守江:僕の料理は結構複雑なので、そういう状況の中では余計わからないと思います(笑)。
Q:そのネオ・ビストロでも複雑な料理を出していたんですね?
守江:そうです(笑)。ただそういう店には、面白い組み合わせをやろうよ、という気運はあります。Le Petit Verdotの方は、クラシックな雰囲気だったので伝統というかベーシックな料理を僕が考えながらアレンジしていった。反対にネオ・ビストロの方では、考えた瞬間にわーっと皿を出すという感じでした。店によって、本当に持って行くベクトルが違います。僕は真面目に仕事をしてしまうので、ネオ・ビストロのような店には向いていないと思います。楽しく働ければいいんですけれど
Q:そういう雰囲気を、楽しめれば、ですね。
守江:そう、楽しめれば、です。
Q:ネオ・ビストロに疲れ始めた時にこのお店の話があったということですか?
守江:他にもありました。「お金を出すから店を?」というような話もフランス人からいただきました。あのタイミングで自分の店を出せばよかったかもしれないですけれど、当時は僕のフランス語のレベルも微妙だったし、自分としてもやっぱりあまり乗り気になれなかったのでやめとこうと思いました。でも、近々出します。
Q:実現はしなかったけれど、当時の計画というかご自分への店のオファーというのはここよりも良い立地条件だったんですか?
守江:まあここよりは良かったです。
Q:ここは、ちょっと奥まっていますよね。
守江:皆さんおっしゃいます。
Q:このあたりの人だったら来るだろうな、と思います。まあ前は病院ですけれど(笑)。
守江:このあたりの人というよりも、常連さんは来てくださいます。Le Petit Verdot時代から来てくださっている方達です。あとは口コミですね。
Q:前からの常連さんというのは「あのシェフの料理を」と探して来てくださるんですか?
守江:そうです。追っかけ、です。
Q:いいじゃないですか、追っかけがいるのって(笑)。
守江:京都からパリへ来るたびに来てくださるご夫婦もいますし、アメリカの方もいます。あとはソーシャル・ネットワークの力も感じますね。
Q:厨房は結構広そうですが何人で?
守江:僕一人です。
Q:ここでも一人!?
守江:僕以外は、洗い場に一人、ホールに一人です。
Q:3人だけで!昼間だけじゃなくて夜も?
守江:そうです。
Q:わー、大変ですね。席数は20ぐらい?
守江:そうです。この前22名という夜がありました。大きなテーブルに8人座ったら、最大で26席あるらしいです。
Q:でも大きさとしては、ちょうど良い感じじゃないですか?
守江:毎日満席じゃないと良いかもしれないです。20名を3人でこなすとなると、僕はサービスもします。お皿を下げたり、出したりというようなことまで。ランチは3皿ですけれど、夜は8皿ぐらいあるし、常連さんだといろいろ考えるし…大変(笑)ではあります。でも前の店では昼に30席で、夜には40席ぐらいですから、今の店の2倍以ぐらいのサービスがあったということになります。
Q:ここは1回転ですよね?
守江:回転していないです。
Q:そうか、一度だけだから回転とは言わない。
守江:ディナーにはやっぱり3時間ぐらいかかりますから。
Q:回転という行為は来てくださる方たちに失礼だと私は思います。
守江:失礼、というよりもお客さんが店を選ぶべきですね。そういうシステムの店もあるということです。知って、選んで通う。
Q:店から「8時と10時があるけど、どっちがいい?」と聞かれると私は「10時」と言います。後ろに予約が入っていない分、急かされずに済むから。
守江:そういう風に言ってくれる店というのは親切ですよ。反対に、うちのような店でも「速く食べて帰りたい」というお客さんがいます。
Q:いるんですか。どうやって対応を?
守江:そういう場合には、そのお客さんが望んでいる美味しいものを速く出すようにします。もちろん皿数を少なくして各皿の盛りを少し増やすとか、トリュフの時期ならばトリュフを加えるなど、工夫が必要です。
Q:夜でも急いでいる人っているんですね(笑)。週末はもっと皆さんゆっくりと?
守江:金曜日、土曜日はそうですね。意外に木曜日も。
Q:話を戻しますが、先ほど「不器用だったから料理」とおっしゃいましたよね?ご家庭に料理関係の方は?
守江:いないです。でも僕は外食が好きでした。母が料理上手だったので家のご飯もおいしかったんですが、外で初めて食べるものに出会うのは嬉しかったです。例えば初めてカキフライを食べた時だとか、洋食だとか。家では和食が主でしたから。
Q:外食をすることが多い家庭だった?
守江:月に2度ぐらいです。
Q:伊予西条だとどこで外食を、松山とか?
守江:いや、大阪とか京都、奈良辺りまで小旅行へ行っていました。広島も好きでしたね、修学旅行で宮島へも行ったし。
Q:あなご飯?
守江:それは食べてないです。
Q:じゃあ広島というと、お好み焼き?
守江:そうですね。僕は初めて広島のお好み焼き屋で相席を体験しました。知らない人と何でテーブルが一緒なんだろう?と子供心にびっくりしたのを覚えています。しかも不倫っぽいカップルで(笑)、こっちは家族だしなあ…と。
Q:それはドキドキしますね(笑)。でも食べることが好きな家庭に育つと楽しいですよね。
守江:さすがにフランス料理は食べなかったです。和食か洋食、蕎麦などですね。その中でも僕は洋食が好きだったので
Q:洋食を目指そう、と。
守江:そうです。洋食といえばフレンチかイタリアンでしたが、イタリアンというとやはりパスタのイメージが強かったじゃないですか。だから「とことんやるならフランス料理だ」と思いました。
Q:どうですか、とことんやるフランス料理というのは?
守江:寛容な料理だと思います。
Q:寛容?
守江:ロジックで、新しいものを受け入れるという意味で寛容だと。ただ今の時代で難しいのは、その寛容さがいいのか悪いのか、ということだと思います。まあ、美食のレストランというのはワールドワイド化しているじゃないですか。レストランもジャンルに関係なくボーダーを引かなくなってきたので、その寛容さがダサくなっているとも思います。自分で選んで生き残っていくしかないですよね。
Q:私がフランスに来た20ン年前には、「フランスで流行っているものは?」と聞かれて「フランスには流行りというのはあまり存在しないです」と答えていた記憶があります。フランス人は結構ゴーイングマイウェイという気がしていましたけれど、ここ10年ぐらいですか、流行りを感じるようになったのは。
守江:20ン年前だと、個人が表現していいということを世間がようやく認め始めた頃ですよね。その前は、例えばホテルで出すような料理のようにこのレシピはこうやって作るという伝統的なものを作るのが料理人でした。その頃からじゃないですか、ミッシェル・ブラスさんとかオリヴィエ・ローランジェさんとかマルク・ヴェラさんやミッシェル・トロワグロさんなどが出てきたのは。彼らは彼らなりに流行りを作ったとは言えますが、ただの流行りではないです。自分の表現の仕方を突き詰めていくという彼らの行為と、今北欧で流行っているからこういうものを作ろうという行為とは全く別のものです。
Q:そう、例えばガニエールさんがわさびを使う、エルメさんが柚子を使うと、右に倣えでみんなが使い始めるとか。
守江:それは完全な「流行り」です。大体誰が何を作っているということは把握しているつもりですが、僕が新しい料理を考えついた時にまずすることは、ネットで検索してみることです。僕と同じことをしている人がいなかったら「ラッキー!」ということに。
Q:ネットがなかった時代には、自分で模索して考え抜いた挙句にできた料理がたまたま誰かと同じだったとしたら「偶然」だと思えたけれど、今のようにこれだけネットが発達して情報が飛び交っていると他人や情報から影響を受けない方が難しい?
守江:見た目が似ているのはともかく、食べる時に作った人が感じられればいいんでしょうけれど、何も感じられない料理というのはやっぱりパクリ、というか他を真似した料理なんじゃないかと思います。僕の場合、「僕らしい料理を作っている」とよく言われますけれど、何が僕らしいのかは自分ではよくわからないです。
Q:ところで厨房でお一人だとすると、仕入れも全て自分の足であちこちに?
守江:バイクで行きます。予約によって、例えば常連さんが来ると知ると気張って仕入れて買い過ぎたりもします。Le Petit Verdotの時には買い出しにはバスを使っていましたから、大変でした。
Q:先ほど「近々ご自分のお店を」とおっしゃっていましたが、具体的には?
守江:去年から動いています。来年から始められればと思っています。もしすぐに決まってしまったら今年の末から始めたいです。
Q:場所は?
守江:自分の好きな6区 、7区あたりで探しています。
Q:どんなイメージのお店にしたい?
守江:物件次第ですけれど、僕はカウンターで客数を少なくしたいと思っています。
Q:中山さんのお店Toyoみたいな?
守江:もっと小さくて、和食器を使ったりもしたいです。そういうスタイルが僕に合っているんじゃないかと。
Q:でも、先ほどゆっくり自分で仕事をするのが好きだとおっしゃっていたじゃないですか。カウンターにすると、お客さんは見えるけれども逆にお客さんから見られるというストレスとかプレッシャーはないですか?
守江:今も見られているようなものですからね。
Q:(初めてキッチンと客席の関係に気づく)わー、私の座った席からは見えませんでしたけれど、本当だ、このお店もキッチンがお客さんから見えるんですね!
守江:そうです、見られてますよ。キッチンが客席から見える今の作りのほうが見られている気持ちになります。
Q:これは確かにステージという感じですね。
守江:逆にカウンターぐらいに近い方が意識しなくてもいい。自分がやりたいのは割烹スタイルの店です。まあ、物件次第ですが。
Q:何席ぐらいのお店を、と?
守江:12席ぐらい。
Q:細長いカウンター?
守江:というよりも「コ」の字型のです。僕一人だったら12席も要らないかもしれない。
Q:なるほど!でも採算取れますかね?他人事ながら心配になってきました。
守江:いや、一番かさむのは人件費です。あとは家賃。
Q:すると(「コ」の字型のカウンターの図を見ながら)こうして動きながらカウンターの中からお客さんにサービスをする。お酒もですか?それともソムリエとかサービスの人がいる?
守江:僕一人です。「L」字型でもいいと思っています。
Q:(一緒に書いた「コ」の字型のカウンターに椅子を描いてみる)11席。
守江:多いな。
Q:じゃあ2席減らしましょう。これならば大丈夫?
守江:フランス料理を出すならば11席は多すぎますね。料理の内容を変えればいけます。でも「コ」の字型はいいですよね、動線さえうまく引ければ。
Q:そうですね、家のキッチンの大きい版みたい。
守江:これなら料理の説明もちゃんとできる。人が間に入ると、ちゃんと伝わったのか伝わっていないのかわからないところがあります。
Q:お客さんが食べる様子を見れる。
守江:そう。僕はもう、コミュニケーションをしたいんです。料理が好きで料理に興味があって、ということを僕はずっとやってきましたけれど、次の新しい興味は何か?と聞かれると、こういう風に自分で店を選んで、作って、お客さんと話をしてということが僕のしたいことなんです。その比重が今は大きくなってきている。今までしてきた料理をベースにしつつ、新しいことを始めたい。
Q:人肌が恋しくなってきた?
守江:まあ誰のために作っているかわからないよりは、この人のために作るとわかっている方が料理も楽しいです。
Q:料理人は孤独だと思いますか?
守江:そうですね。お客さんが美味しいと思っているかどうかがわからない、それがたとえ「美味しかった」と言って帰ってくれたとしても。というのは、僕が東京でサービスをしていた時に色々な場面を見たんです。まあ若かったので鮮明に残っているのかもしれません。一度は会社員のテーブルで「ああだこうだ」と言われたのに、彼らは最後シェフに「おいしかったです、ごちそうさま」と言って帰ったんです(笑)。「こいつら何なんだ!」と思いましたね。
Q:「なんだよ、これ不味いじゃん」みたいなことを言った挙句に「どーも、美味しかったです」って帰っていった。
守江:「魚臭かった、とシェフに言っとけ」と言われて、僕からシェフにそんなこと言えないと思って言わなかったんですが、最後は「どーも!」でしたね(笑)。そういう場面に若い時に出くわしているからこそ、カウンターでお客さんと対面したいという気持ちがある。知っているお客さんがほとんどということもあるので、楽しく商売ができればいいかなと思っています。
Q:でも、商売だから損を出さずに利益もある程度得つつ、ですよね?
守江:利益はもちろんいただきますよ(笑)。この店だってそれほどの利益は出していないですからね。
Q:ここは、経営者は別の方ですよね?
守江:そうです。
Q:経営はどういう風に?バジェットを渡されるのですか?
守江:収入と支出の割合で計算します。ここまでが支出と決められたパーセント中で仕入れを行う。いつもパーセントギリギリですけれどね。
Q:オーナーは結構厳しい人ですか?何軒もお店を持っている方?
守江:アソシエという形で去年まで3軒持っていました。
Q:今は?
守江:ピザ屋とこの店と2軒です。でもここももう直ぐ売りに出すかもしれない。
Q:そうなんですか?
守江:そうです。
Q:だから独立するのにいい機会かな、と?
守江:まあ、そうですね。2年以上ここで働いていますからもういいだろう、と思って。
Q:このお店へ来たのは2014年の?
守江:4月1日です。
Q:でもご自分の店の話が具体化する前にここが閉まってしまったら、また別の店へ?
守江:いやその前、夏に辞めるとオーナーには言ってあります。
Q:するとオーナーもシェフが抜けるからいい機会だ、と手放すつもりになった?
守江:いや、彼はパリを離れるんです。パリは何かと高いじゃないですか。子供がいて店を個人が経営するということは結構大変みたいです。
Q:ここもお家賃を払っているんでしょう?
守江:そうです。7年ぐらいで店を手放す人は多いですね。すでに返済も終わっていて
Q:少し高く売って利益を得る、という感じ?まあ、転がす人はいますからね。
ご自分で買うつもりはない?
守江:いや、最初言われたんですよ。「どう?」って。そのつもりで僕をシェフとして呼んだみたいです。でも僕は「買わないよ」と返事をしました。
Q:ここは広すぎる?
守江:いや、そうじゃなくて立地が悪い。ここは郊外でも地方でもないのに
Q:病院や宗教施設(昔から修道院などが多く存在した地域にお店はあります)があるので、もともとここは静かな地区ではありますよね。もっとゴブランとかムフタールあたりに行けばまた話は違うと思います。
守江:でも、ゴブランやムフタールじゃこういうレストランは無理でしょう?このレストランの雰囲気はこの地区には合っているんです。
Q:このお店みたいな静かな雰囲気で5区だったらパンテオンの裏側とか?
守江:そこも僕には難しいですね。
Q:だったらやっぱり6区ですか。するとCherche-Midiシェルシュミディ通りよりももっとデプレの方へ流れてRue de Rennesレンヌ通りまで広げたとしても…Boulevard Raspailラスパイユ大通りにも静かな区域があるし…
守江:デプレあたりはめちゃくちゃ高いですよ。
Q:確かに立地は重要ですよね。
守江:加えて立地に合った店作りをしなければならないんですが、僕個人的にはカウンターで小さな店をやりたいです。
L’Auberge du 15
Adresse : 15 rue de la Santé, 75013 ParisTEL : 01.4707.0745
URL : www.laubergedu15.com/index.php
火-土 12h00-14h30/19h30-23h00 昼のセットメニューは39€と68€、夜のセットメニューは89€。